2022.12.27 リーダー研修は必要?リーダーシップ研修との違いや今求められる資質と研修のポイントを解説
テレワークの普及をはじめとした、各業界を取り巻く環境の変化により、リーダーの重要性は増しました。このような状況下で、優秀なリーダーを育成したいと思っても、具体的には何をしたら良いか分からず迷われている企業様も多いはずです。そこで今回は、なぜリーダー研修が必要なのか、そして研修の目的やより効果的な研修内容とは一体どういったものなのか、現代のリーダーに求められる能力をもとに解説します。
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リーダー研修とは?
リーダー研修とは、これからチームや会社の組織を引っ張っていく人材に向けた研修のことです。主にリーダー研修を行う対象となる社員の層は、今後管理職に就く可能性のある社員や、これから管理職になる社員、現役管理職の社員、また、管理職でなくともプロジェクトチーム等をもつリーダーです。
リーダーは、目標に向かってメンバーを引っ張っていく存在です。様々な考えを持つ人がいるチーム全体を、同じ方向に向かって動いてもらうことは容易ではありません。
リーダーとして目標達成を導けるだけの専門知識を持つことはもちろん、計画を立てる力や行動力、チームメンバーに指示をだすこと、チームメンバーとコミュニケーションをとってモチベーションを維持させたりする力など様々な力を持つことが求められます。
また、リーダーは、部下を指導・育成しているプレイングマネージャーであるケースが多く、多忙な業務の中、リーダーを兼務することになるので、求められているリーダーとしての役割を認識することが大事です。
リーダーシップ研修との違いとは
リーダー研修と、リーダーシップ研修は似た言葉ですが、異なるものです。
リーダー研修は上述の通り、チームや会社の組織を引っ張っていく人材であるリーダー候補の育成や、現在リーダーとなっている人たちに対して行われます。一方、リーダーシップ研修は全社員が対象です。
リーダーはリーダーシップを持つことが求められますが、近年ではリーダーでなくとも、リーダーシップを持つことが求められてきています。これはセルフリーダーシップとも呼ばれ、プロジェクトや業務の中の課題を自分事として捉え、どのようにしたいのかを認識し、そのために主体的に行動し、問題を解決しようとすることです。
近年は様々な場面で生産性向上が求められ、現場での判断や行動を自ら行うことができる人材が求められるようになりました。また、先行き不透明・予測不能、VUCAの時代であると言われています。言われるがままの姿勢では、時代に取り残されてしまう上、成果を上げることは難しいでしょう。
セルフリーダーシップを発揮するメンバーが増えることで、それぞれの個人が豊かになることはもちろん、組織のパフォーマンスが向上し、会社の文化・風土として根付くことになります。
今行うべき研修がリーダーを育成・フォローする研修なのか、全社員対象のリーダーシップ研修なのかをはっきりしておくとよいでしょう。
ここではリーダーを育てるリーダー研修について書いていきます。
指揮をとる立場の社員に向けた「まとめる力」を育むための研修
リーダーの立場になると、部下とうまくコミュニケーションをとりながら、会社から求められる目標へ効率良くチームを導く必要があります。しかし、リーダーはただ単に抱えている仕事内容を管理して、部下に仕事を割り振れば良いと思っている方も少なくありません。それでは単なる業務マネジメントになってしまいます。
そのため、指揮をとる立場の社員に対しては、現状を踏まえて同じ目標に向かってチーム全体で同じ方向性をとることができるよう、リーダーとしての役割を認識し、部下・チームメンバーとのコミュニケーションの仕方や、指導方法、決断力などに関する研修を実施する必要があるのです。その結果、チームをまとめる力がつきリーダーとして活躍できるようになっていくのです。
研修の対象となる社員の例
主にリーダー研修を行う対象となる社員の層は、今後管理職に就く可能性のある社員や、これから管理職になる社員、現役管理職の社員、また、管理職でなくともプロジェクトチーム等をもつリーダーです。
昨今、失敗経験や苦手意識、今までの仕事が変わることなどの不安、残業時間の増加を敬遠して、管理職を望まない方が増えてきていますが、だからこそ企業としては早期にリーダー研修を行い、時間をかけてチームをまとめる力を養っていく必要があります。
研修後は、小さなプロジェクトのサブリーダーを任せるなど、徐々に裁量のある仕事を割り振るようにしましょう。仕事に取り組むうちに、研修で学んだ内容を活かしつつリーダーとしてのスキルを高め、自信をつけていくことができるのです。その結果、将来的に管理職不足に陥ることを防ぎ、経験値の高いリーダーの育成ができます。
また、現役で管理職をしている社員にリーダー研修を行うことで、現状の課題や自己目標を明確にしてすぐに業務に反映してもらうこともできます。その結果、社内の労働環境やモチベーションの変化に効果が期待できるでしょう。
今リーダー研修が話題に上っている理由
いま、新人研修と並んでリーダー研修に注目が集まっています。近年、急速なテレワークの普及等により、以前のように社員ひとりひとりが置かれている状況を把握することが難しくなったことが要因のひとつです。ここでは、リーダー研修をなぜ開催する必要があるのか具体的に解説していきます。
組織のあり方が多様化したため
時代の変化に応じて、仕事をする環境は大きく変わっています。在宅で業務行ったり、海外にいる社員とオンラインミーティングを開催したりと、ツールの活用とともに働き方そのものも変わってきています。
こうした、仕事を取り巻く環境がめまぐるしく変化し続ける今だからこそ、様々なものに対応できる柔軟性をリーダーとして養っていくことが求められています。今後も、会社や仕事に関わる環境は速いスピードで変化していくことが予想されます。リーダーとして信頼や威厳を持ち続けるためにも、意識をアップデートしていくことは必須だといえるでしょう。
そのような背景があるため、新しいリーダーとしての考え方・ふるまいを学ぶことができるような研修に注目が集まっているのです。
人材の不足
近年では、転職は珍しいものではなくなりました。実際、入社3年以内の退職者は3割にも達しています。そして新入社員だけではなく、中堅社員であっても「今後この会社にいても成長が見込めない」ことや「人間関係が良くない」等の理由で転職をしている方は多数います。もちろん、転職をすることで自分の思い描くキャリアステップを進められるという点では前向きに考えるべきことではあるのですが、企業としては死活問題にもなり得る事柄です。
退職者が出ると、人員が補充されて実務レベルに成長するまでは人手不足の状況が続くことになります。少ない人員で効率良く業務をこなし、設定した目標を達成するためには、リーダーの力量がかなり重要です。また、離職率を減らすという観点でも、リーダー研修の効果が注目を集めています。
研修を通し、リーダーとして適切なマネジメントを行うことができるような人材を育成することで、社員のモチベーションを向上させたり、より働きやすい環境を作ったりすることができます。ただ人材が不足した状況に対してだけでなく、慢性的な人手不足の解消にもリーダーとしてのスキルを身につけることが大切なのです。
成果が求められるようになったため
多くの企業で、これまで主流だった「年功序列」から「成果主義」の経営方針へと変化しています。これまでは、長く働けば働くほど職位や給料が上がっていくのが日本のほとんどの企業のスタイルでした。しかし、近年は受注した契約の大きさや件数、目標に対する到達度等で成績評価をつけるようになってきています。
その結果、チームでより良い成果を収めることが以前よりも増して重要になりました。チームやグループのリーダーは、部下が目標に向かって前向きな気持ちで業務を遂行してもらうにはどうしたら良いか、またチームの団結力を高めるためにはどうしたら良いかを、マネジメントという形で実行するリーダーとしての活躍が求められています。また、効率良く成果を出すため、部下ひとりひとりの強みを把握し適切に仕事を配分していくことも必要です。
そういったリーダーとしての能力を養うためにも、リーダー研修として専門の研修を取り入れる企業が多くなっています。
リーダー研修実施の目的
リーダー研修を行うことで、リーダーとして求められているスキルがどのように身につき、また現場のどのような局面で生かされるのかは知っておきたいものです。ここでは、研修を行う目的を5つ紹介し、社員がこれらのスキルを身につけることで社内にどのようなメリットをもたらすのかご説明します。
①「リーダーとはどうあるべきか」を理解する
リーダーの仕事は「自分が上に立って与えられた業務を部下に割り振り、指示を出すことだ」と考えている方も依然多くいます。もちろん、実際の業務をうまくマネジメントすることは大切ですが、リーダーには仕事内容や専門知識、ノウハウを部下に教えたり、部下のモチベーションを上げたりすることも求められています。
研修では、そもそもリーダーとはどういった役割なのか、また理想のリーダーはどのようなリーダーかなど、根本の部分から学ぶことができます。そこから現状の分析をし、足りない能力や得意な分野を理解した上でどのように業務に向き合っていくべきかを考えます。その結果、リーダー自身も「リーダーである自覚」を持つことができ、自分自身の掲げるリーダー像に向かって自発的に行動を見直していくようになります。
②チームメンバーとより良い関係を築けるようにする
リーダーは部下に指示を出したり、教えたりする立場です。しかし、部下の状況を理解せずに、一方的な判断で仕事を進めてしまうと、信頼関係は一気に崩れていくでしょう。
業務を適切に進行しながら良好な関係を築くためには、部下が相談をしやすい環境づくりを行うことや、リーダー自ら率先してコミュニケーションをとり、部下の悩みや考えを汲み取ることが重要です。そうすることで、求められているアドバイスを適切に伝えたり、部下本人が気づいていない部分の課題まで共に解決したりできるようになるでしょう。
また、リーダーとして部下と接する中で「褒める」「叱る」などのシーンが出てきますが、その際には、適切な伝え方を心がけるようにしなければなりません。場合によっては信頼関係は大きく崩れることもあるため、こうした「伝え方」に関する研修も合わせて必要になります。
もしチームにおいて信頼関係が失われてしまうと、チーム内での円滑なコミュニケーションができなくなってしまいます。その結果、業務の指示が通らなくなったり、適切なアドバイスができず部下の成長が止まってしまったりという悪影響が予想されます。最悪の場合、離職する人が増えるなど悪循環が生まれてしまうこともあるでしょう。
こういった点から、研修を通じて正しいコミュニケーション能力を養っていくことは、チーム内で良好な関係を築くために必須であるといえます。
③判断力を養う
チームが同じ方向を向いて仕事をしていくため、リーダーは目標達成に向けた行動計画の作成や進捗管理を行います。部下にはそれらの内容を踏まえ、適宜現状の報告や今後のビジョンを共有していくことが多いです。そこで、リーダーによる適切な分析や共有ができないと、部下は方向性を見失ってしまい、業務がストップしてしまいます。
そのため、リーダーには適切な判断でチームを導くことが求められるのです。
とはいえ、常に高い目標をチーム全体で達成していくためには、リーダーはプレイヤーとして活動を続けながらも、チームを俯瞰し部下の管理をしていく必要があります。様々なスキルを求められているリーダーに対して、研修によって適切な判断力を養う機会を提供することはリーダー・リーダー候補の実際のチームマネジメントの支援になります。
④優秀な部下を育てられるようにする
ここまでご紹介した通り、リーダーとして部下の分析を正しく行いコミュニケーションをしっかりとるようにすることで優秀な部下を育てることができます。そのためには、部下の意見にしっかりと耳を傾け、課題を見つける力や能力に見合った仕事を与える判断力が重要です。
報告・連絡・相談をまめに行い、自ら課題を見つけ修正していくことができるような部下を育成できれば、部下の成長スピードを加速させられます。リーダー研修を実施するにあたって、リーダーだけでなく間接的に優秀な部下・人材の育成を行うという目的も含まれているのです。
⑤物事を俯瞰して捉えられる人材になる
リーダーになったにもかかわらず、普通の社員と変わらずにプレイヤーとして仕事に没頭してしまう方がいます。こうした傾向は、特にリーダーになったばかりの社員に多く見られ、「リーダーとして高い数値目標やグループの成績を牽引しなければならない」という思いが先行してしまうことから起こることが多いです。
しかし、リーダーとしてグループを運営するには、チームを俯瞰して見ることが必要不可欠です。リーダーはグループ全体の様子を見ながら、今後のチーム課題や部下ひとりひとりの現状を把握する必要があるからです。そうすることによって、チーム全体の目標達成に向けて足りない部分の能力を伸ばしたり、互いに助け補える関係を作ったりすることができるようになっていきます。
リーダーとして育むべき能力3つ
リーダーはチーム全体が日々前向きに目標の達成に向けて仕事を行ってもらえるよう、働きかけていく必要があります。
ここでは、部下のモチベーション維持のためのコミュニケーションや正しい指導スキル等、日頃からリーダーとして求められる能力であり、育むべき能力をご紹介します。
①仕事の能力や専門性
常にリーダーは最新の知識をもち、専門性にも優れていなければなりません。リーダーになるまでの経歴において現場で学んできたことも多くあるでしょう。もし現場の現状が把握できていなかったり、知識や専門性において部下に遅れをとったりしている場合には、適切なマネジメントができない可能性があります。
リーダーだからこそ、常に最新かつ正しい情報を集めて部下に発信できる立場でいることが大切です。そのためには、どういった資格があるのか、どこから最新情報をとってくれば良いかを明確に理解しておく必要があります。
ここで気を付けておきたいのが、必ずしもリーダー個人がすべての専門性や能力を持ち合わせる必要はありません。リーダーは、チーム全体で目標達成すべく、各々の専門性や能力を生かしてチームとして目標達成にたどり着くことが求められています。
②部下を適切に育成する力
「リーダーとして部下の面倒をしっかり見なければならない」という思いが強く、部下に業務のイロハを全て教えてしまい、部下が考えることを止めてしまうことがあります。しかし、これでは部下は常に受け身の姿勢になってしまい、なかなか成長できません。時には、全てを教えるのではなく部下に自ら調べることを促したり、判断を委ねてみることも必要です。
また、部下に自分自身の経験や学んできた知識やノウハウを正しく伝えるには、相応のスキルが必要です。もし部下にポテンシャルを感じ、積極的に仕事を任せようと思っても、自分の持っている知識やノウハウをうまく伝えられなければ、なかなか部下の成長にはつながっていきません。それでは、リーダーとしてチーム力を高めることも、優秀な部下を育てることもできないと判断されてしまいます。
③コミュニケーション能力
仕事を進める上で最も大切な信頼関係を築くには適切なコミュニケーションが必要です。一方的に指示や命令しかできないリーダーには誰もついてきません。部下がリーダーに相談をしてきた際には背景や状況を踏まえた上でしっかりと内容を聞き、理解する力が必要です。相談内容をしっかりと聞かずに想定で途中で返答をしてしまったり、的外れな回答をしてしまうと話を聞いてもらえなかったと判断され信頼関係は崩れていきます。
また、相談された内容を二者間ですり合わせを行い、深掘りをしていくことができるかどうかも重要です。適切な質問を投げかける力がリーダーにないと、部下が言いたい本質の部分がつかめずに終わってしまいます。リーダーが適切な深掘りをしていくことで部下も頭の中が整理され言いたいことが明確になっていくのです。
部下からの質問に対して、アドバイスをする提案力も大切でしょう。部下の言いたいことがなにかすり合わせができたところで、解決のための方法をしっかり部下の意見も交えながら今までの経験や知識を使って答えを出す必要があります。部下の置かれた状況や性格、希望を踏まえて適切な意見を出せる上司こそ、リーダーであるといえるのです。
効果的なリーダー研修を行うために気を付けたいポイント
ここまでの内容を踏まえ、リーダー研修を効果的に行うための具体的な内容をご紹介します。一口に「リーダー」といっても会社によって求められるリーダー像は変わってきます。そういった点も踏まえつつ、読み進めてみてください。
研修対象者を絞り込む
リーダー研修の対象となる社員は幅広く存在します。しかし年次や今の役職によって求められるリーダーのスキルそのものが異なります。今後リーダー候補となるような人材に研修する場合には、即戦力より、前段階としてチームワークを構築する力や協調性など複数人で1つのことを成し遂げられる能力を身につけることが求められます。
また、リーダーになったばかりの社員には、適切なコミュニケーションの取り方であったり、リーダーとしての自覚や現状分析や課題の発見が求められるでしょう。
既に管理職として働いている社員には、より効率的なチーム運営や今後を見据えた洞察力、予算等も踏まえた、より経営者寄りの知見を養ってもらう必要があります。
このように、役職によって求められているものや能力が違うにもかかわらず同時に研修を行ってしまうと、ディスカッションがうまく進まなかったり、悩みの共有等もできなくなってしまい非効率です。研修実施にあたってコストはかかってしまいますが、研修の対象者を絞りこみ、それぞれに最適化した研修を行うことが重要です。
自社の課題に即した研修を行う
リーダー研修を行う際には、自社の課題にあったものを選ぶ必要があります。先程も述べた通り、対象者が変わると研修の内容も大きく変わってきます。それに加え、企業によって求められているリーダーのあり方はさまざまです。
自社のリーダー像にあった研修を行うことで、参加した社員から共感や納得が生まれ、研修に対する信頼度や理解度が高まります。
また、ロールプレイングなどのケーススタディを取り入れることで、部下の立場になって考えたり、他の社員のやり方を見て自分自身の弱みを客観的に再認識したりするきっかけになります。ロールプレイングであれば、部下にティーチングをする、メンタルケアをするなど様々な場面を想定して行うことで、実際にそのような場面に立った際柔軟に対応できる力がつきます。こういった点からケーススタディによる学習が望ましいことが分かります。
フィードバックやアウトプットの場を設ける
研修において、ケーススタディを通じて講師からフィードバックをもらうことで、具体的にどういったことを今後課題として、何をしていくべきなのか知ることができます。また、研修で学んだリーダーとしての知識をアウトプットすることも大事です。アウトプット方法はさまざまですが、実際に部下のマネジメントを行う際、研修で学んだ内容を実践するのが最も効果的でしょう。
いざその場面に直面した時には、研修内容を応用してどのように対応したら良いか考え、実際の場面でどうしたら良かったのか振り返ることができれば、より適切な判断ができる力を養うことができます。
時代や自社のニーズに合ったリーダーを育むことが大切
今回は、リーダー研修の必要性や効果的な研修方法について解説しました。昨今の時代の変化によって、目指すべきリーダー像もまた変化しています。現代のリーダーに求められているのは単なる人材管理能力だけではありません。
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