2025.03.05 eラーニングのデメリットへの対策をご紹介

インターネットを活用した学習形態であるeラーニングは、企業の研修から学校教育、個人のスキルアップまで幅広い場面で活用されています。場所や時間を問わず学べる手軽さから、企業のオンライン研修や教育機関でのデジタル授業、さらには個人の資格取得学習など、その需要は年々高まっています。
この記事では、eラーニングのメリット・デメリットを比較し、デメリットをカバーする対策をご紹介します。企業の人事・教育担当者、学校の教職員、個人の学習者、そしてeラーニングコンテンツ提供者といったそれぞれの立場の読者に役立つ情報を提供していきます。
eラーニングとは?
eラーニング(e-Learning)とは、パソコンやタブレット、スマートフォンなどを使ってインターネットを通じて学ぶ学習形態のことです。従来の紙教材や対面授業をデジタル化したもので、オンライン講座・動画教材・ウェブテストなど様々な形態があります。一般的にはLMS(Learning Management System)と呼ばれる学習管理システム上で教材配信や受講履歴の管理が行われます。LMSは「eラーニングシステム」や「eラーニングプラットフォーム」とも呼ばれ、受講者用の学習画面と管理者用の管理画面を備えたeラーニングの基盤となる仕組みです。
「eラーニング」という言葉が広く使われ始めたのは2000年前後からで、それ以降約20年にわたり企業の人材育成などに取り入れられてきました。特に近年では研修コスト削減や学習効果向上への期待から、企業を中心に利用が増加傾向にあります。eラーニングは企業では社員研修や従業員教育に、学校・大学ではオンライン授業や教材配信に活用され、個人は語学や資格取得のためのオンライン講座を受講する手段として定着しています。また、教育サービス提供者にとっては、自社コンテンツをオンラインで受講者に提供できるため、物理的な教室がなくても研修事業や講座ビジネスを展開可能です。
eラーニングのメリットとデメリット
まずはeラーニングのメリットとデメリットを項目別の表にまとめました。
項目 | メリット | デメリット |
---|---|---|
コスト | 研修会場・講師の交通費・宿泊費などの削減が可能。一度作成した教材は繰り返し利用できる。 | 初期導入にはLMSの設定や教材制作のコストがかかる。 |
時間・場所の自由度 | いつでも・どこでも学習できるため、勤務時間が不規則な社員や遠隔地の受講者にも対応可能。 | 自己管理が必要なため、計画的に進めないと学習が滞るリスクがある。 |
学習機会の均等化 | 受講者全員が同じ教材・研修を受けられるため、教育の質を標準化できる。 | 受講者の学習ペースがバラバラになり、進捗に差が出る可能性がある。 |
研修管理の効率化 | LMSにより受講状況・テスト成績を一元管理でき、人事・教育担当者の負担を軽減できる。 | 受講者の理解度や集中度をリアルタイムで把握しにくい。 |
教材の更新・共有 | 情報変更に応じて迅速に教材を更新でき、新製品情報や社内ルールを即時周知可能。 | 教材制作には時間と手間がかかるため、初期準備が大変。 |
学習ペースの調整 | 各自の理解度に応じて繰り返し学習できるため、復習やスキマ時間の活用がしやすい。 | 一人で学ぶためモチベーションの維持が難しく、途中で離脱するリスクがある。 |
リアルタイム性 | 一斉配信が可能なため、多数の受講者に対して一括で教育を提供できる。 | リアルタイムで講師や他の受講者と対話しづらく、疑問点をすぐ解決できない場合がある。 |
受講者同士の交流 | コミュニティ機能やチャットを活用すれば、受講者同士の学習サポートが可能。 | オンライン環境では対面研修のような直接的な交流が減り、チームワーク醸成が難しい。 |
データ活用 | 受講履歴・テスト結果のデータを蓄積し、学習傾向や研修効果を分析できる。 | 研修データのセキュリティ対策や個人情報保護が求められる。 |
実技研修の対応 | VRや動画教材を活用すれば、視覚的な理解を促進できる。 | 介護・医療・製造などの実技を伴うトレーニングには不向きな場合がある。 |
この表を参考に、貴社の研修・教育目的に適した活用方法を検討ください。
特に「研修管理の効率化」や「時間・場所の自由度」は大きなメリットとなる一方、「モチベーション管理」や「受講者同士の交流不足」には対策が必要です。
詳しく、メリット・デメリット別に解説していきます。
eラーニングのメリット
eラーニングには、企業・教育機関・学習者それぞれの立場で多くのメリットがあります。主な利点を以下にまとめます。
研修コストの削減
研修会場の手配や講師の交通費・宿泊費など、集合研修にかかる費用を大幅に削減できます。一度コンテンツを作成すれば繰り返し利用できるため、長期的には運営コストを抑えられます。また参加者の移動に伴う時間的ロス(業務の機会損失)も減らせます。
時間・場所の柔軟性
インターネットに接続できれば、いつでも・どこでも受講できます。勤務時間が不規則な社員や遠隔地にいる受講者でも、自分の都合に合わせて学習可能です。例えば夜勤がある社員や地方支社の社員でも、オンラインで同じ研修を受けられます。内定者向けの入社前教育や中途採用者の研修にも活用でき、従来は難しかったケースにも学習機会を提供できます。
学習機会の均等化
eラーニングは一度に多数の受講者に同じ内容を提供できるため、全員が均一な質の教育を受けられます。講師や開催場所に左右されず、全国の拠点で一斉に研修を行うことも可能です。これにより、社内教育のばらつきを防ぎ、標準化された知識やスキルを浸透させることができます。
研修管理の効率化
受講者の進捗状況やテスト成績をシステム上で一元管理でき、担当者の管理負担を大幅に軽減できます。誰が研修を修了していないか、テストで基準点に達しないのは誰か、といった情報を即座に抽出でき、従来の研修管理の工数を大幅に削減できます。紙での記録や手作業の集計が不要になり、人事・教育担当者にとって効率的です。
教材の速やかな更新・共有
eラーニング用教材は必要に応じて迅速に追加・修正できます。新製品の知識や社内ルール変更など最新情報をタイムリーに全社員へ共有できるため、情報伝達のスピードが向上します。受講者が資料を確実に読んだかどうかもシステムで確認でき、社内ナレッジ共有の強化に役立ちます。
自分のペースで学習できる
学習者にとっては、自分のペースで繰り返し学習できる点がメリットです。難しい箇所は何度も復習したり、理解が進んだ部分は先に進んだりと、各自の理解度に合わせた学習が可能です。移動時間や待ち時間を利用してスマホで学ぶこともでき、忙しい社会人のスキマ学習にも適しています。
受講者対象の拡大
オンライン配信によって地理的な制約がなくなるため、教育サービス提供者にとっては受講者の対象を全国や海外にまで広げられる利点があります。リアルな教室を構える必要がないので、低コストで新規市場にアプローチできます。企業にとっても、海外支社を含むグローバル研修を一括して実施することが可能になります。
学習データの蓄積と分析
eラーニングでは受講履歴やテスト結果といったデータが自動で蓄積されます。これらを分析することで研修効果を可視化したり、学習者の傾向を把握して次の研修計画に活かしたりできます。学習履歴データは社員のスキル管理にも役立ち、人的資本の可視化にもつながります。
eラーニングのデメリットと対策
一方で、eラーニングならではの課題や注意点も存在します。主なデメリットを見ていきましょう。
またデメリットをカバーする対策もご紹介します。
自己管理・モチベーションの維持が必要
「いつでもどこでも受講できる」反面、一人ひとりの学習意欲に学習ペースや理解度が大きく左右されます。受講者自身が計画的に進めないと学習が滞ってしまう恐れがあり、対面研修に比べて自己管理が求められます。孤独な学習になりやすく、人によってはモチベーションを保ちにくい点が課題です。
対策
- 受講リマインド機能の活用…受講期限前の自動リマインドや進捗チェックを実施。
- 進捗確認・上司のフィードバック…上司がフォローする仕組みを作ると学習意欲向上に。
- ゲーミフィケーション導入…ポイント制度やランキング表示で学習継続を促進。
- 学習ガイドラインの設定…学習計画を提示し、進捗が遅れないようにする。
- 必須・選択式の学習カリキュラム…必須コンテンツを設定し、個別に選択可能な教材を用意。
- 学習インセンティブの導入…学習完了者に特典(修了証・報酬・評価ポイントなど)を付与。
- SNS・掲示板機能の活用…受講者同士が交流できる場を設け、学びを促進。
- 学習の目的を明確化…学習目的やメリットを明示し、モチベーションを高める。
リアルタイムの双方向性に欠ける
eラーニングでは基本的に録画教材やオンラインテキストを各自閲覧するため、講師と直接対話したり質問したりする場面が少なくなります。自分の疑問をその場で質問できず、回答を得るまでタイムラグが生じます。また他の受講者とのディスカッションや意見交換の機会も限定的で、集合研修で得られるような気付きや刺激が得にくい側面があります。
対策
- 定期的なライブQ&Aセッション…週1回などのペースでライブQ&Aを設け、疑問を解消。
- LMSのチャット・掲示板活用…LMS上のチャットや掲示板で受講者同士・講師と交流。
- ハイブリッド型研修の実施…オンライン学習+対面研修を組み合わせ、フォロー体制を強化。
受講者同士の交流不足
企業内研修の場合、対面研修では他部署の社員同士が顔を合わせることで社内ネットワークを構築する副次的なメリットがありましたが、オンライン研修ではそうした交流の機会が減少します。受講者間の一体感やチームワーク醸成がしにくい点は、オンライン研修の課題と言えます。
対策
- ディスカッション機能の活用…LMSの掲示板やSNS機能を活用し、受講者同士の意見交換を促進。
- 共同課題の導入…チームで取り組む共同課題を設定し、交流機会を増やす。
- コミュニティイベントの実施…定期的にオンラインミートアップを開催し、交流の場を提供。
学習状況の把握が難しい
オンライン上では講師や管理者が受講者の様子を直接見ることができないため、集中しているか理解できているかを把握しにくいです。対面であれば表情や態度から理解度を察してフォローできますが、eラーニングでは受講者が画面の前にいても別作業をしている可能性も否定できません。不正受講の防止や受講態度の可視化が課題となる場合があります。
対策
- LMSのテスト・アンケート機能を活用…定期的な確認テストやアンケートで理解度を測定。
- ライブ研修を併用…講師がリアルタイムで反応を見られるライブ研修を併用。
- AIによる学習ログ分析…AIを活用し、学習時間や回答傾向から理解度を分析。
- ライブQ&Aセッションの開催…定期的に講師と交流できる場を設け、不明点を解消。
導入準備や教材制作のコスト・手間
eラーニングを始めるには、システムの準備や教材コンテンツの制作に一定の手間とコストがかかります。ITに不慣れな場合、LMSの設定や操作に戸惑うこともあるでしょう。研修内容を動画やスライド教材に落とし込むには企画・制作の工数が必要で、初期導入のハードルとなることがあります。
対策
- クラウド型LMSの利用…クラウド型LMSならサーバー不要で低コスト導入が可能。
- 既存コンテンツの活用…教材は無料コンテンツや過去の研修資料を活用し、作成負担を軽減。
- 助成金・補助金の活用…企業向けの補助金を活用すれば導入費用を抑えられる。
- 外部コンテンツ・テンプレート活用…既存のeラーニングコンテンツやテンプレートを活用。
- AIによる教材生成…AIを活用したコンテンツ自動作成ツールを導入。
実技研修には不向きな場合も
工場での作業訓練や医療・介護など実地での実技習得が重要な分野では、画面越しの学習だけでは十分な効果が得られないことがあります。シミュレーション動画やVR教材である程度補完はできますが、実物を使った訓練や対面指導が不可欠なスキルについては、eラーニングだけで完結するのは難しい場合があります。
対策
- VR/AR技術を活用…VR/ARを活用したシミュレーション研修を導入。
- 対面実習と組み合わせる…座学はオンライン、実技は対面で実施するハイブリッド型に。
- 実技評価テストの実施…動画提出による実技評価テストを実施し、オンラインでもフィードバックを提供。
データ管理・セキュリティ対策が必要
学習データを活用できるメリットがある一方、 個人情報保護やデータ管理のセキュリティ対策が必要です。
対策
- シングルサインオン(SSO)の導入…シングルサインオンを導入し、ログイン管理を強化。
- アクセス制限・権限管理…受講者ごとに閲覧権限を設定し、情報漏洩を防止。
- セキュリティ認証取得LMSの選定…ISO 27001などのセキュリティ認証を取得したLMSを利用。
最後に
メリットだけでなく、デメリットもあるeラーニングですが、様々な対策をとられつつ、たくさんの企業で活用されています。
今後eラーニング展開をお考え・もっと広げていこうとされる中で、課題となっているものがあれば、ぜひお聞かせください。長年課題解決を行っているプロシーズが御社の課題解決に向き合ってまいります。