2021.11.19 オープンバッジとは?企業・個人のメリットと紙の証明書が抱える課題
社員教育を効率的に行うためには、人材管理やキャリアを明確化することが大切です。加えて、社員が自主的にスキルアップしたいと感じる環境を整えることで、より効果的な人材育成が可能となります。
これらを同時に叶えるのは簡単なことではありません。しかしオープンバッチを活用すれば、人材管理やスキルに応じた再配置、また社員のモチベーションアップを図ることができます。
ここではオープンバッチとは何か、導入事例や企業にとってのメリット、取り入れるための方法についてご紹介します。
紙の証明書が抱えるデメリット
資格や学習成果については、これまで紙で証明書が印刷され、そのコピーを提出する、といった方法で第三者に共有するのが一般的でした。しかしその際にはさまざまなデメリットが生じていました。
認証される側から見たデメリット
卒業証書や資格取得証明などは、これまで紙で発行されるのが一般的でした。しかし、紙の保管は面倒ですし、紛失の恐れもあります。また保管状態によっては、劣化してしまい再発行が必要になることもあるため、紛失していないにも関わらず、再発行が必要になることもありました。
人材を活用したい企業・団体から見たデメリット
スキルや学習成果は、本人が提示しない限り確認することはできません。しかし、趣味で取得した資格など、一見業務に結びつかないようなスキルや学習成果が、大きく役立つこともあります。
また提示し忘れや更新漏れによる失効、社内で管理できるシステムがないためにデータが共有されず、適した人材配置やキャリアパスを提示できないことも、大きなデメリットと言えるのではないでしょうか。
その他、紙は特殊なもので印刷されていなければ、改ざんすることも可能です。そのため信用性が低いというのも、企業にとってはデメリットと言えます。
こうした問題を一挙に解決できるのがオープンバッチです。
オープンバッジとは
個々人のスキルや学習成果を、紙ではなく国際標準規格に則りデジタルで証明するものをオープンバッチといいます。
オープンバッチのメリットは、紙の証明書が抱える課題を解決し、より万人に共有しやすく、さらに客観的に評価できる点にあります。その特徴について見ていきましょう。
特徴1:インターネットを使って簡単にスキルや学習成果を共有できる
オープンバッチの大きな特徴の一つは、デジタルでスキルや学習成果を証明できることです。それぞれの資格を表す画像(PNGまたはSVGなど)をメールやSNSに貼り付けることで、どの団体が発行する、どんな資格を持っているのかを共有することができます。
特徴2:ウォレットで全てのバッチを管理できる
オープンバッチはIMSグローバルラーニングコンソーシアム(IMSグローバル/ IMS/ IMS Global Learning Consortium)という団体が策定している国際標準規格です。この団体では、学習にかかわる素材・証明・ツールといったものを自由に組み合わせることができるように、標準規格を策定しています。オープンバッジもその一環で、オープンバッジの規格に沿ったシステムからバッジを発行できる団体がバッジを発行することで、発行した団体に関わらず、保有者は自分専用のウォレットでバッチを一括管理することができます。
また保有者やバッチの情報を共有された相手はウォレットを確認するだけで、これまで学習・習得してきたスキルを一覧で確認することが可能に。
保有者は現状どの資格が有効なのか、更新日がいつまでなのかなども一元管理できるので、更新ミスを防ぐことができます。また共有された相手は、スキルや学習成果を網羅的に確認することができるので、人材配置などに役立てやすくなるでしょう。
特徴3:表示項目が統一されている
オープンバッチから確認できる内容は、「スキル(バッチ)名」「発行者」「授与日」「受領者」「有効期限」と項目が決まっています。そのため汎用性や視認性が高く、誰が見てもわかりやすいというメリットがあります。
特徴4:就職・転職活動の際のスキル証明書になる
どんなスキルや資格を持っているかを証明することができるため、就職・転職活動時に役立ちます。スキルのある人材の採用を求める企業にとって、スキルの証明があることは選考する上での良い検討材料になるでしょう。
特徴5:コスト削減につながる
紙の証書の場合、新たに発行しようとすると手数料や郵送料などがかかることが多くありました。しかしオープンバッチの場合、メールやSNSなどで共有できる、国際標準規格に則ったデジタルデータのため、こうしたコストをかけずに他者に共有することができます。
企業でオープンバッジを導入するメリット
さまざまなメリットを有するオープンバッチですが、企業が導入することで、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
人材育成上のメリット
オープンバッチは人材管理しやすいだけでなく、社員のモチベーション向上にも寄与してくれます。今回は2つのメリットをご紹介します。
モチベーション・エンゲージメントを高めることができる
IBM社では、デジタルバッチを獲得した従業員の87%が、より積極的に仕事に取り組んだというデータもあります。同社では、人事・教育システムとして、「取得したバッジ情報をもとに、専門性や関連スキルを考慮して次に取得すべきバッジや組織内で需要の高い役職・スキルに関する情報を得られる」ようになっています。このような情報やキャリアパスの提示をセットにすることで、社員のモチベーション・エンゲージメントを高めることができます。
しかし、実際に運用するためには次の役職やキャリアアップに必要なスキルとは何かというスキルの棚卸を行う必要があります。
※データ参考元:JETRO 保有スキル等の見える化手段と活用状況(アメリカ、カナダ、ドイツ)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2020/7b73cf9a5e1dfe74/NYdayori_202011_webnyuko.pdf
また、オープンバッチを導入することで、社員は自分の成長を視覚的に実感することができます。視覚的に確認できるため、モチベーションも高まりやすくなります。
学習管理システムなら社内教育・研修をデジタルで管理できる
オープンバッチに対応した学習管理システムを導入すれば、社内教育や研修の内容も反映させることができます。そのため未受講者の把握にも役立てることができるでしょう。
また社内で新たにシステムを構築する必要はないため、取り入れやすいというのもポイントです。
組織運営・人材管理のメリット
オープンバッチの導入は、組織運営や人材管理の上でもさまざまなメリットがあります。
客観的基準をもとに人材評価が可能に
オープンバッチで確認できるスキルや学習成果は、いずれも外部の企業や団体によって承認を受けたものです。そのため人材評価に客観的な視点を取り込むことができます。
「見えにくいスキル」も確認できる
個人的の趣味でオンラインや通信教育などで学習した内容など、履歴書には明示されないスキルは、なかなか明確化されないものです。一方で、こうした「目に見えにくいスキルや学習成果」が現場で重宝されたり役立ったりする場面は少なくありません。
その点、オープンバッチでスキルや学習成果が視覚化できれば、こうした目に見えにくい部分も明確になり、人材配置に役立てることができます。
スキルを加味したチーム編成が可能
オープンバッチの内容をもとに、ある一定のスキルや学習成果を持つ人材を集めて部署やチームを組むことができます。例えば、MBAをもつ人材を各部署に配置したり、メンタルヘルスに関する資格を持つ人を課題を抱える部署に配置するといったことも容易になるでしょう。
他社に向けて有能なスタッフがいることを示せる
本人の許可を得た上で、オープンバッチを自社サイトで公開すれば、社内に優秀な人材がいることも示せるでしょう。
例えば採用ページに先輩・同僚紹介ページを作り、そこでオープンバッチを導入すれば、どんな人材と共に働けるのか想像しやすくなります。また入社後取得したスキルや学習成果を明確にすれば、「自己成長が図りやすい会社」と認識されやすくなるでしょう。
その他優秀な人材を複数抱えていることが分かれば、取引先の信用も得やすくなります。特に初めて取引する企業に対しては、重要な信用材料の一つになるかもしれません。
人材獲得上のメリット
外部から新たに人材を獲得する際、相手がオープンバッチを利用していれば、どんなスキルをもつ人物なのかを確認することができます。
特に昨今は求人サイトだけでなく、人材に直接アプローチするダイレクトリクルーティングを取り入れる企業が多くなっています。社内もしくは取引先からの紹介などで連絡をとることが多い中で、事前にどんな人材かをチェックできれば、アプローチを掛けるかどうか検討しやすくなるでしょう。
オープンバッチを導入するために、まずはスキル評価する仕組みを整えよう
いかがでしたか?
さまざまなメリットがあるオープンバッチは、今まさに導入企業が増えている分野でもあります。簡単にオープンバッチを導入するのであれば、対応した学習管理システムを活用するのがおすすめです。
企業内で有用に活用するのであれば、スキルの棚卸など、社内のキャリアップ制度を整える必要があります。
弊社プロシーズでは、LearningWareというeラーニングシステムを提供しています。オープンバッジの機能を搭載する予定もしています。
また、会社やグループなどで使用している評価項目を設定し、社員に自己評価を回答してもらうことで、それぞれのスキル管理を行うことも可能です。自己評価の点数に紐づいた選択肢に回答させることで、対象者の業務やヒューマンスキルがどの程度のレベルにあるのかを数値化することができます。
スキル管理は人材育成や管理の面で役立つだけでなく、社員それぞれが次に自分が取り組むべき業務や能力などを視覚的に認識することにもつながります。そのため、自主的かつ能動的なスキルアップを促すためにもご活用いただけます。
まずは、スキルの棚卸しから始めて、社内の人材育成の効率化・モチベーション向上を行うのはいかがでしょうか。