2025.08.04 eラーニングシステムの選び方ガイド|コンテンツ提供型・プラットフォーム型で比較

eラーニングシステムは、社員教育や研修の効率化に欠かせないツールです。主に「コンテンツ提供型」と「プラットフォーム型」に分かれており、それぞれ特徴や選び方のポイントが異なります。この記事では、タイプ別に比較の観点を整理し、導入時に役立つ情報をまとめました。
そもそもeラーニングシステムとは?導入メリット・LMSとの違い
eラーニングシステムとは、パソコンやスマートフォンなどを使って、時間や場所にとらわれずに学習を進められる教育支援の仕組みです。社員の研修やスキルアップを効率化するために、多くの企業が導入を進めています。なかでも、企業向けのeラーニングシステムは、教材の配信だけでなく、受講履歴や進捗の管理、テスト・アンケートの実施など、教育全体を一元管理できるのが特徴です。
eラーニングシステム導入による主なメリット
- 時間・場所を問わず学習できる(在宅勤務・現場社員にも対応可能)
- 受講履歴やテスト結果を自動で記録・管理できる
- 一人ひとりの進捗や理解度に応じた教育が可能になる
- 教材が搭載されている場合は、教材作成コストが抑えられる
- 豊富なコンテンツのために、自主的に必要なものを学習できる
- 集合研修に比べてコストが抑えられる
- 内容の更新・再利用が容易なため、教育の質を継続的に改善できる
こうした柔軟性や効率性から、新入社員研修・コンプライアンス教育・スキルアップ研修など、さまざまな場面で活用されています。
LMSとeラーニングシステムの違いは?混同しやすい用語を明確に区別
eラーニングシステムと似た言葉に「LMS(Learning Management System:学習管理システム)」があります。 LMSは、主に学習の進捗管理や成績管理など、管理機能に特化した仕組みであり、教材コンテンツそのものは含まれない場合もあります。
一方、eラーニングシステムはLMSの機能に加えて、あらかじめ用意された教材や動画コンテンツを提供しているサービスも多く、すぐに教育をスタートできるのが特長です。目的に応じて、以下のように選び分けるとよいでしょう。
- すぐに使える教材も欲しい場合 → 教材付きのコンテンツ提供型のeラーニングシステム
- 教材を自社で作成して活用したい場合 → LMS機能が充実したプラットフォーム型のeラーニングシステム
このように、eラーニングシステムは単なる学習ツールではなく、人材育成を効率化・高度化する戦略的な仕組みとして、多くの企業で活用されています。
コンテンツ提供型・プラットフォーム型とは
eラーニングシステムには大きく分けて「コンテンツ提供型」と「プラットフォーム型」の2種類があります。それぞれに特長があり、導入目的や運用体制によって適したタイプが異なります。
コンテンツ提供型とは
あらかじめ用意された学習コンテンツ(動画・教材・テストなど)をそのまま受講者に提供できるタイプです。研修内容がすでにパッケージ化されているため、導入後すぐに運用を始められるのが特徴です。
利用シーン
- 汎用的なスキル(情報セキュリティ・ビジネスマナーなど)を社内全体で習得させたいとき
- 社員が自分のペースで多様な講座を自由に受講できる環境を整えたいとき
プラットフォーム型とは
自社独自の教材やテストをアップロードし、カスタマイズして運用できるLMS(学習管理システム)です。受講者ごとの進捗管理、結果分析、外部システムとの連携などが可能で、柔軟な設計が強みです。
利用シーン
- 専門知識や業務フローに即した研修を自社で構築・運用したいとき
- 社外パートナーや顧客向けにブランドに合わせた研修環境を提供したいとき
eラーニングシステムの主な機能
ここでは、導入前に「自社に必要な機能が揃っているか」を見極めるために、主な機能を受講者向け・管理者向けに分けて紹介します。利用シーンやメリットとあわせて、自社の運用に合った機能が揃っているかをチェックしてみてください。
管理者向けの主な機能
受講者・グループ管理
部署・拠点別などの受講グループ設定やID管理が可能。大規模運用にも対応。
教材作成・アップロード
PowerPoint・PDF・動画などから教材を作成し、配信できる。ナレッジの蓄積にも役立つ。
コース設計・公開スケジュール管理
受講順序や公開期間を設定でき、計画的な教育設計が可能。
テスト・レポート・アンケートの作成/集計
学習の理解度や満足度を可視化し、教育内容の改善に活用。
分析機能
学習状況・完了率・テスト結果などを可視化し、組織全体の教育効果を把握。
不正受講の防止機能
AI監視・ログ解析・顔認証などで、形だけの受講や代理受講などの不正を抑止。
API連携・外部教材連携
人事システムや他の教育サービスと連携し、情報の一元管理や運用効率化を実現。
受講者向けの主な機能
進捗管理・履歴確認
自身の学習進捗や受講履歴を確認しながら、計画的な学習が可能。
テスト・クイズ受講
理解度チェックや習熟度の確認ができ、反復学習を通じた定着も促進。
修了証の発行
指定の条件を満たすと自動で修了証を発行。受講完了の証明として活用可能。
比較ポイント内容:選定時に見るべき項目
ここでは、eラーニングシステムの導入を比較検討する際に押さえておきたい主なポイントを、コンテンツ提供型とプラットフォーム型に分けて紹介します。
コンテンツ提供型の比較ポイント
コンテンツ提供型のeラーニングサービスは、すでに用意された豊富な学習教材を活用しながら、即時に教育をスタートできる点が特長です。導入時には以下の比較ポイントをもとに、自社の課題や目的に合ったサービスを選定することが重要です。
- コンテンツの豊富さ
- コンテンツ内容
- 階層別研修
- 学習・進捗管理
- 多言語対応
コンテンツの豊富さ
提供されている教材の総数やジャンルの幅を指します。ITリテラシー、語学学習、プログラミングなど、幅広いテーマに対応しているかがポイントです。従業員の多様な学習ニーズをカバーできるかどうかを見極めます。
コンテンツ内容
動画の構成や講師の質、実務に即した内容かどうかを確認します。単なる知識提供にとどまらず、実践的な演習やケーススタディがあるかどうかも重要です。また、企業向けに最適化されているかも評価ポイントになります。
階層別研修
新入社員、中堅社員、管理職といった階層ごとに、適切な研修パッケージが用意されているかを確認します。階層に応じた成長支援が可能なサービスは、長期的な人材育成戦略にも貢献します。
学習・進捗管理
受講者の進捗状況や受講履歴を把握できる管理機能の有無は、教育効果の測定やフォローアップに直結します。個人ごとの受講データを管理者が簡単に確認できるUI設計やレポート機能の有無も比較のポイントです。
多言語対応
グローバル展開や外国籍社員の採用を視野に入れている場合、多言語対応は欠かせません。対応言語の種類だけでなく、字幕・音声の品質や、UIの多言語切替対応なども重要な評価項目です。
このように、コンテンツ提供型サービスの比較では、教材の「量」だけでなく、「質」や「運用面」での利便性を総合的に判断することが求められます。
プラットフォーム型の比較ポイント
プラットフォーム型のeラーニングは、自社教材や独自の研修体系を反映できる柔軟性が特長です。下記の項目をもとに、導入後の運用に適したサービスを見極めましょう。
- 教材作成機能
- 学習管理機能
- 多言語対応
- Zoom連携・マルチデバイス
- カスタマイズ性
- 掲示板・チャット
- セキュリティ
- API連携/SSO(シングルサインオン)
- コンテンツの豊富さ
- サポート体制
- AI対応
教材作成機能
動画・PDF・スライド・クイズなど、さまざまな形式の教材を簡単に作成・登録できるかどうか。ドラッグ&ドロップやテンプレートの有無、操作の直感性なども評価ポイントです。
学習管理機能
受講状況・進捗管理、修了判定、レポート出力など、管理者向け機能の充実度を確認しましょう。部門ごとのレポート抽出やアラート機能があると、運用負荷を大きく軽減できます。
多言語対応
グローバル展開している企業や外国籍スタッフがいる場合、受講画面・管理画面の多言語対応状況は必須チェック項目です。英語以外の言語にも対応しているかを確認しましょう。
Zoom連携・マルチデバイス
ZoomなどのWeb会議ツールとスムーズに連携できるか、またスマートフォン・タブレットなどマルチデバイスでの視聴や受講履歴の同期が可能か。ハイブリッド型研修を想定する場合は特に重要です。
カスタマイズ性
デザイン・URL・ログイン画面などの見た目のカスタマイズから、研修フローや権限設定の自由度、独自開発・オンプレミス環境まで、自社仕様にどこまで対応できるかを見ておくと、導入後の柔軟性に差が出ます。
掲示板・チャット
受講者・社員同士のコミュニケーションや講師との質疑応答に活用できる掲示板・チャット機能の有無と使いやすさを確認しましょう。情報共有やナレッジ蓄積に活用できると、学習効果が高まります。
セキュリティ
個人情報の管理、通信の暗号化、アクセス制限など、セキュリティ対策が十分か。ISO27001やISMS認証の取得状況、サーバーの設置場所なども確認しておきたいポイントです。
API連携/SSO(シングルサインオン)
既存の人事システムや社内ポータルとの連携が可能かどうか。SSO対応により、ユーザーの利便性向上と管理者の工数削減が期待できます。APIの公開範囲もあわせて確認しましょう。
コンテンツの豊富さ
自社教材の登録に加えて、初期搭載またはオプション提供される汎用コンテンツ(コンプライアンス・情報セキュリティなど)の充実度も確認しましょう。内製と外部提供のバランスが取れるかも重要です。
サポート体制
導入前後の支援体制やトラブル発生時の対応スピード、マニュアル・FAQの整備状況など、運用面での安心感につながる要素です。特に海外製のサービスではサポートが無い場合もあるため、日本製を選ぶことで安心して運用できるケースもあります。
AI対応
学習履歴の分析やパーソナライズ、テスト作成・レポート採点など、AIを活用した機能が搭載されているか。運用効率化や学習効果の最大化につながります。
コンテンツ提供型・プラットフォーム型でポイント別にシステム比較!
「コンテンツ提供型」と「プラットフォーム型」のeラーニングシステムについて、LearnigWareと他6社を対象に、各サービスの特徴や強みを比較ポイントごとに整理しました。システム導入を検討する際の参考にぜひご活用ください。
【コンテンツ提供型】eラーニングシステム比較表
比較ポイント | LearningWare | A社 | B社 | C社 | D社 | E社 |
---|---|---|---|---|---|---|
コンテンツの豊富さ | 〇 | ◎ | 〇 | ◎ | △ | ◎ |
コンテンツ内容 | ◎ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ◎ |
階層別研修 | ◎ | ◎ | △ | △ | 〇 | ◎ |
学習・進捗管理 | ◎ | △ | 〇 | △ | 〇 | ◎ |
多言語対応 | ◎ | × | × | × | × | ◎ |
【プラットフォーム型】eラーニングシステム比較表
比較ポイント | LearningWare | A社 | B社 | C社 | D社 | E社 |
---|---|---|---|---|---|---|
教材作成機能 | ◎ | ◎ | 〇 | 〇 | ◎ | 〇 |
コンテンツの豊富さ | 〇 | 〇 | 〇 | △ | ◎ | 〇 |
多言語対応 | ◎ | 〇 | ◎ | ◎ | 〇 | △ |
Zoom連携・マルチデバイス | ◎ | 〇 | 〇 | ◎ | 〇 | ◎ |
学習管理機能 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | 〇 |
カスタマイズ性 | ◎ | ◎ | 〇 | 〇 | △ | △ |
掲示板・チャット | ◎ | 〇 | ◎ | ◎ | 〇 | △ |
セキュリティ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
API連携/SSO | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | 〇 |
サポート体制 | ◎ | ◎ | 〇 | ◎ | 〇 | △ |
業界別のシステムの選び方
eラーニングシステムを導入する目的や求められる機能は、業界によって大きく異なります。人材育成の体制、現場環境、セキュリティ要件など、業界特有の事情に合わせて最適なシステムを選ぶことが重要です。ここでは、主要な業界ごとに、選定時に重視すべきポイントを簡潔に整理しました。
製造業
安全衛生や品質管理、機器習熟など実務・プロセス研修の定着が重要です。特に、マイクロラーニング型の短尺教材や安全シミュレーション、クイズ機能を備えたシステムが有効です 。
教育業(学校・高等教育など)
多様な学習スタイルに対応できる柔軟性と、学生・教員の識別管理や進捗評価機能が求められます。特に、遠隔学習やハイブリッド授業に対応したマルチデバイス設計や学習履歴の可視化が重要です。AIを活用し、生徒一人ひとりの学習状況や理解度に合わせて学習内容を最適化する「個別学習」も必要とされています。
医療業界
常に変化する規制(感染対策・情報保護など)に対応できるコンプライアンス教材・継続教育(CME)サポート機能が必要です。eラーニングによる柔軟な学習と、修了証発行や受講履歴の追跡機能を備えることが求められます。
保育・介護サービス業
外国人スタッフや主婦層などに配慮したやさしい言語対応や多言語インターフェースが重要です。現場で使える実技教材、短時間で受講できるスキマ学習を提供できることが求められます。
小売業
接客マニュアル、商品知識、売上分析トレーニングを店舗スタッフに迅速に展開するため、モバイル対応と日常業務に沿った内容設計が必須です。動画+クイズで理解を促す教材や、迅速に履修状況を確認できる管理機能が有効です。
金融業界
法令遵守が厳格な業界のため、受講履歴のタイムスタンプ付き管理、進捗レポート出力、多要素認証などの高度なセキュリティ機能が不可欠です。新人から管理職までの階層別教育コンテンツも重要です。
政府・公共機関
職員研修や市民向け教育において、セキュリティと行政基準への適合性が重要です。情報公開や多拠点職員への一斉配信に対応できる通知機能やレポート出力、ユーザー管理機能を備えたシステムが適切です。
まとめ:目的に合ったeラーニングシステムを選ぼう
eラーニングシステムは、「どのような教育を、誰に、どのように行いたいか」によって、最適なタイプや機能が異なります。コンテンツが豊富に揃っていてすぐに学習を始めたいなら「コンテンツ提供型」、自社の教材や研修運用に柔軟に対応したいなら「プラットフォーム型」が有力な選択肢です。
比較表や業界別の選び方を参考に、自社にとって本当に使いやすく、効果的なシステムを見極めてい