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知っておきたい「派遣」と「請負」の違い!偽装請負への対策もご紹介

近年、企業の業務委託活用が増加傾向にあります。

企業のIT人材の不足、働き方改革によるフリーランスの増加、企業の副業解禁による副業エンジニアの増加などが、業務委託増加の要因と考えられています。、

業務委託の増加とともに、派遣業界では「偽装請負」の事案が問題視されています。
知らないうちに法令違反をしてしまっているケースもあり、非常に厄介な問題です。この記事では、一見よく似ている労働者派遣と請負契約の違いについてご説明し、その後偽装請負への対策をご紹介します。外部の従業員と一緒にお仕事をされている方に、ぜひ読んでいただきたい内容となっています。

「派遣」と「請負」の違いとは


早速、労働者派遣と請負契約の違いについてご説明します。
まずはそれぞれの業務形態についてひとつひとつ解説をした後、「派遣」と「請負」で異なる部分をピックアップします。
派遣と請負の違いに関する認識が誤っていることが原因で法令違反が起こってしまうこともあるため、ぜひこの機会に正しい理解をしましょう。

労働者派遣とは

労働者派遣も請負契約も、派遣元の会社と派遣先の会社、そして派遣される労働者の三者がいて成り立ちます。
特に労働者派遣に関していえば、派遣元の企業(派遣会社)が派遣労働者を派遣先の企業に派遣するという形で契約が交わされます。
雇用主は派遣元の企業ですが、労働者は派遣先の指示に従って業務を行います。
多くの企業で取り入れられている形態なので、イメージしやすいのではないでしょうか。

請負契約とは

請負契約は、請負会社との間に雇用契約を結んだ労働者が、発注者と仕事を行うものです。
雇用関係は請負会社と労働者の間に生じ、請負契約は請負会社と発注者で結ぶことになります。労働者は「発注者と仕事を行う」と表現しましたが、仕事に関する指揮は請負会社が行います。
また、請負契約の目的は「仕事の完成」にあります。ソフトウェアの開発やホームページ制作、建設工事などの案件でよく用いられる形態です。

労働者派遣と請負契約の違い

とてもよく似ている労働者派遣と請負契約ですが、その2つの形態の間には契約上でも実務を行う上でも非常に重要となる違いがあります。
最も大きいのは「誰が指揮を行うか」という点での違いです。
労働者派遣の場合には派遣先の会社が労働者への指示を行うのに対し、請負契約の場合、労働者に対する業務上の指示は請負会社から行われます。
指揮を誰が行うかという部分は非常に重要で、認識を誤れば偽装請負状態を作ってしまうことにもつながります。

近年問題になっている「偽装請負」とは?

近年、特に派遣業界を賑わせているのは「偽装請負」に関する話題です。
ここでは偽装請負そのものの説明に加え、なぜ偽装請負が禁止されているのか、また偽装請負にはどのようなパターンがあるのかを解説します。
この機会に偽装請負についての理解を深め、偽装請負を未然に防げるようにしましょう。

請負契約を装って行われる実質的な労働者派遣

偽装請負とは、請負契約を結んでいるのにも関わらず、実態は労働者派遣になってしまっている状態のことです。
請負契約では、発注者側が業務上の指示を行うことや、契約外の業務を委託することが禁止されています。
そのため、発注者が労働者の指揮をとった時点で偽装請負となるのです。
直接指示をするのであれば、派遣契約を結ばなければなりません。

なぜ偽装請負は禁止されている?

発注者目線で考えると少し不便なように思えるかもしれませんが、偽装請負が禁止されている理由がしっかりとあります。

たとえば、労働者保護の観点が良い例です。
仕事の完成や納品物に対して対価を支払う請負契約を結んだにも関わらず、発注者から指揮命令や関係のない職務に関する指示が行われると、労働者は不当に働かされてしまうことになります。また、偽装請負状態で働いている労働者の中には、社会保険や雇用保険に加入していない人もいます。万が一業務中に病気や怪我をしてしまった場合に責任の所在がうやむやになってしまうため、偽装請負は非常に危険なのです。

他にも、労働基準法で禁じられている「中間搾取」を防止するという目的もあります。
中間搾取とは、第三者が雇用関係に介入し、労働者に対して本来支払われるはずだった報酬を搾取することです。偽装請負の場合、労働者を雇用した請負会社が中間搾取を行ったと判断されます。こうしたケースから労働者を守るために、偽装請負はなくしていかなければなりません。

偽装請負の典型的なパターン4種類

偽装請負には、大きく分けて4つのパターンがあります。
それぞれの概要や特徴をご紹介します。
いつの間にか偽装請負状態になってしまう場合も多々ありますが、巧妙に偽装請負を隠していることもあります。
紹介するパターンに心当たりがあるのであれば、要注意です。

①スタンダードな偽装請負

最も多いのは、発注者が労働者に直接指示を行ってしまっているパターンです。
はじめは請負会社が指示を行っていても、業務を進めていくうちに指揮を行う人が変わってしまうこともあります。
偽装請負の状態としては最も分かりやすいですが、そもそも偽装請負に対する認識を持っていない発注者もいるため、事前の認識合わせは必須だといえます。

②形だけ担当者を置く方式

請負会社側に担当者を置き、その担当者を通して発注者からの指示を労働者に伝えるというものです。
この形式は意図的に偽装請負が行われる際の常套手段です。
一見すると請負会社から労働者に対して指示が行われるように見えますが、発注者からの指示をそのまま伝えているのであれば、実質発注者が指示を行っていることになります。
「指示は担当者を介して伝えてください」と言われている場合は、偽装請負の可能性もあるため注意しましょう。

③責任の所在が不明なパターン

外注や下請けを頻繁に利用しているのであれば、気をつけなければならないのがこのパターンです。
請負会社が発注者から受けた仕事を外部委託した場合、仕事に関する指示がさまざまな場所から行われる可能性があります。外部委託先の労働者に対して請負会社や元々の発注者が指示を行うのは、偽装請負となります。
こうしたケースでは、責任の所在や業務指示のフローがうやむやになりがちです。
外部委託先が増えれば、実際の使用者を特定するのは難しくなります。

④個人事業主として就労させる方式

これは発注者と労働者の間に雇用関係を結ばず、発注者と請負を受注した個人事業主として取り扱う方式です。そうした契約方式自体に問題はありませんが、発注者が労働者に対し自社の従業員と同様に指示を行うと偽装請負とみなされます。
請負会社から人材の斡旋を受ける場合には、誰がどのように指示を行うのか明確にしなければなりません。

偽装請負を行うとどうなる?

ここからは偽装請負を行ってしまった場合の罰則に関して解説していきます。
偽装請負を行った場合の罰則は、主に下記の3つの法律で定められています。

労働者派遣法

無許可で派遣事業を行ったことに対して罰則が科せられます。
第59条2号で、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金と定められています。

職業安定法

偽装請負を行うと、職業安定法第64条9号をもとに、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
これは労働者供給事業を無許可で行ったことに対する罰則で、無許可で派遣された労働者に対して指示を行った事業者も処罰の対象となっています。
請負会社だけでなく、発注者も罰せられる可能性が十分にあるのです。

労働基準法

偽装請負が禁じられている理由のひとつとして「中間搾取の防止」を挙げましたが、労働基準法ではこの中間搾取に関する罰則が定められています。
118条では中間搾取を行った者やそれを手助けした者に、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金を科すとされています。
場合によっては発注者も中間搾取を手助けした者とみなされ、罰則の対象にもなり得ます。

偽装請負状態においては、請負会社に罪があると思ってしまいがちですが、発注者にも大きな責任があります。
故意かそうでないかに関わらず、偽装請負への関与は非常にリスクが大きいとお分かりいただけたでしょうか。

受け入れ先の企業も要注意!知らずに偽装請負になってしまうケースも

偽装請負をなくすためには、発注者、つまり受け入れ先の企業の意識改革も必要不可欠です。
業務の進め方を誤ってしまったり、請負企業に虚偽の説明をされたりして、知らないうちに偽装請負に加担することもあり得ます。
請負契約に関わる場合には全員が当事者意識を持つ必要があります。

業務の進め方次第で偽装請負状態に陥ることがある

業務を請け負っている労働者であっても、社内で仕事をしていると自社の従業員と同じように扱ってしまいがちです。
特に社内で請負契約や偽装請負に関する情報がうまく共有されていないと、業務担当者が請負労働者に対して直接指示を行ってしまうこともあります。
業務の発注をする際には、契約を行う従業員だけでなくその業務に関わる従業員全員に情報をしっかりと共有するようにしましょう。

派遣元企業に誤った説明をされることも

偽装請負が発覚した際、時々発注者側から上がるのは「労働者派遣だと思っていた」という声です。
実際、請負会社から適切な説明を受けていないことが原因で、発注者から労働者に直接指示が行われてしまうことがあります。
悪質なケースでは、請負会社が意図的に誤認を招き、さも労働者派遣であるかのように装うことすらあります。
こうした事例に巻き込まれないようにするためには、契約の内容と実際の労働状況を照らし合わせ、偽装請負状態になっていないか発注者側でセルフチェックすることが非常に重要です。

偽装請負を回避するための方法

請負契約は、業務の進め方次第で偽装請負状態の発生にもつながるシビアなものです。
ここからは偽装請負を回避するための方法を3つご紹介します。
法令違反を起こしてしまう前に、有効な対策を講じましょう。

業務フローの適正化

まず大切なのは、請負と派遣の違いを正しく理解し、誰がどこまで指揮するのかを明確にすることです。
その上で、発注者から直接指示が行われないよう、業務フローを適正に保ちましょう。
請負契約において対価の支払い対象になっているのは、従業員との雇用ではなく、あくまで成果物や仕事の完成です。
発注者は、予定業務以外の業務について絶対に直接交渉を行ってはいけません。

社内外への情報周知

請負契約をして業務を進める場合、請負会社は社内外にその旨や偽装請負を防止するための方策を共有しておく必要があります。
社内では適正に業務を進められていたとしても、取引先からの指示が原因で偽装請負状態になってしまうということも考えられるため、社内だけでなく社外への情報周知も必要不可欠です。

派遣契約への切り換えを行う

最もおすすめなのは、派遣契約に切り換えをしてしまう方法です。
派遣契約を結べば、派遣先の企業(請負契約でいう発注者)は派遣労働者に対して正式に業務上の指示を行うことができるようになります。
請負契約は、発注者と労働者が密に連携するような仕事には向いていません。
ダイレクトに指示をしながら業務を円滑に行っていきたいと考えているのであれば、派遣契約への切り換えは必須だといえます。偽装請負状態を作り出さないために、ぜひご検討ください。

高まる「派遣」の需要と必要な措置

請負契約も労働者派遣も、人材不足を補うための手段として広く用いられてきました。
ただ、近年では派遣契約を選ぶ企業が多くなっており、派遣資格を取得して派遣事業を始める事業者も増えてきています。
この章では派遣の需要が高まっている要因や、派遣事業者として人材派遣業を行うために必要なものについて解説します。

各業界で進む「人材派遣」への切り換え

近年、幅広い業界で請負契約から派遣契約への切り換えが進んでいます。
人材不足を補うため新たな契約を結ぶ場合にも、選ばれるのは派遣契約であることが多いです。コンプライアンス意識の向上や、働き方に関する考え方の変化などさまざまな要因はありますが、偽装請負に対する目はたしかに厳しくなっています。
偽装請負になってしまうことを避けたいという各企業の考えが、こうした流れを生んでいるのです。

派遣事業を行うために必要なもの

人材派遣の需要拡大に合わせ、派遣事業者として起業したいと考えている方も多いでしょう。
派遣事業の許可要件には主に下記のようなものがあります。

・一定レベルの資産額を確保すること
・事務所の環境に関する条件を満たすこと
・適正な雇用とその管理ができる派遣元事業者であること
・労働者の教育や訓練を適正に行うための計画を持っていること
・許可申請にあたり、非認可になるような欠格事由を持っていないこと
・派遣元責任者講習を受けた責任者を置くこと

詳しくは別の記事でもご紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

中でもキャリアアップ教育訓練の準備は重要

派遣事業を始めるにあたって満たさなければならない要件の中でも、キャリアアップ教育訓練への取り組みは非常に重要です。認可の際に教育訓練を用意していなければならないためでもありますが、教育訓練は競合の派遣会社との差別化を図れるポイントでもあります。
人材の専門性を高め、優秀な人材を派遣するためにも質の高いキャリアアップ教育訓練の用意は必要不可欠です。
コロナ禍で集合研修を行うのが難しくなったことや、業務で忙しい中でも教育訓練を行えることから、eラーニングでの教育訓練の導入も進んでいます。当社でも、教育訓練のためのeラーニングコンテンツを多数用意しています。各専門分野に特化した内容を学べるようになっているので、キャリアアップ教育訓練にお悩みならぜひご検討ください。

偽装請負を避けるために派遣契約への切り換えを進めませんか?

偽装請負の中には発見しづらいものもありますが、ペナルティや労働者を取り巻く状況を考えると非常にリスクが高いといえます。
たとえ法令を遵守していたとしても、請負契約では直接指示ができないため業務がうまく進まないこともあります。業務フローの滞りにお悩みなのであれば、派遣契約の導入をおすすめします。また、派遣事業に関するお悩みごとや、eラーニングに関するご相談がございましたら、ぜひ「派遣の学校」までお気軽にお寄せください!

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