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人材派遣会社を作るにはどんな資格が必要?要件や必要書類を解説!



派遣事業の市場規模は2022年度売上で8兆8,600億円(前年度から7.6%増)、2023年5月時点の派遣社員は159万人で、前月から5万人増、前年同月から4万人増となりました。

この大きな市場をもつ派遣事業の可能性は今後も広がっていくことが予想されますが、事業を始める際には厚生労働省の認可を取得する必要があります。
そして認可を得るためにはいくつかのステップがあり、人材派遣で起業をする際には事前準備が必須だといえます。
この記事では主に人材派遣会社を設立するための必要資格や要件、必要書類について解説を行います。

1. 人材派遣業とは

そもそも人材派遣業とはどのような業種なのでしょうか。
「従業員を集め、人材を必要としている場所への派遣を行う」という漠然とした認識をお持ちの方も多いかもしれませんが、実際はもう少し細かく定義がされています。
人材派遣業に似た業種の「有料職業紹介事業」との違いを含めて解説を行います。

1-1. 自社で雇用した社員を派遣する事業

人材派遣業のベースとなるのは、社員を雇用して人材として派遣を行うというスタイルです。
人材派遣に関する法律の労働者派遣法では、「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることを業として行うこと」が人材派遣であると定義されています。
つまり、派遣会社に雇用された従業員をその会社以外の会社で労働に従事させるのが人材派遣業の基本となっているということです。

1-2. 有料職業紹介事業との違い

人材派遣業と似たような業種に「有料職業紹介事業」というものがあります。
これは人材を集めて仕事をあっせんし、仲介手数料を派遣先企業から得るという業種です。
一見すると同じような業種に思えますが、最も大きな違いは雇用先がどこであるかという部分にあります。
人材派遣業では従業員は「派遣元」の会社に雇用され、有料職業紹介事業では「派遣先」の企業に雇用されます。
そのため、これから起業を考えて入る場合には行う事業がどちらに分類されるのか明確にしておく必要があります。

1-3. 人材を派遣できる業種・できない業種

多様な業界において人材派遣会社からの従業員派遣が行われていますが、その一方で人材派遣を行うことができない業種も存在します。
下記がその一例で、どれも高度な知識や技術・資格を要するものです。

  • 弁護士や司法書士
  • 医療関係業種(医師や看護師など)
  • 建設作業や土木作業に従事する職種
  • 港湾運送業務を伴う職種(船内荷役や検査業務などに従事する場合)
  • 警備に関連する業務

この他にも人材派遣を行うことができない職種や、条件付きの派遣のみ認められている業種があります。
これから起業し、事業を展開しようとしている業種で人材の派遣が認められているのか、またそのために満たすべき条件があるのか事前に確認しておく必要があるでしょう。

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2. 派遣事業を始めるにあたって必要な資格・許可とは

派遣会社は、誰しもが作ろうと思った時に作れるわけではありません。
事業を始める前に必ず取得しなければならない許可や資格があります。
資格の取得に際して実務経験も必要となるため、事前の確認と準備を怠らないようにしましょう。

2-1. 必要な資格:派遣元責任者

派遣事業を始めるためには、派遣元責任者講習を受講して派遣元責任者になる必要があります。
必要な資格はこの一つですが、実際に派遣元責任者として職務を行う場合には3年以上の雇用管理経験が求められます。
具体的には企業で人事や労務の担当者を3年以上経験するか、職業安定行政や労働基準行政で3年以上業務に従事するなどの経験が必要です。
なお、これらの経験は20歳時点から起算されるため、実務を20歳未満から始めた場合には要注意です。

2-2. 必要な許可:労働者派遣事業許可

派遣元事業責任者となったら、厚生労働省から「労働者派遣事業許可」という認可を取得することになります。
2015年の労働者派遣法の改正により、すべての派遣事業者は許可を得て事業を行わなければならなくなりました。
また、初回は3年、それ以降は5年ごとにこの許可の更新をしなければ事業を継続することはできなくなります。
派遣事業で起業する上で避けては通れない許可なので、頭に入れておきましょう。
この許可を取得するための要件については、次の章で詳しく紹介します。

3. 労働者派遣事業許可を得るための要件

派遣会社を設立する際には、最終的には厚生労働省の認可(労働者派遣事業許可)の取得を目指すことになりますが、そのために満たさなければならない要件がいくつもあります。
ここでは要件を五つに大別し、それぞれの概要をご紹介します。
現状との比較やこれからの目標策定にお役立ていただければ幸いです。
各要件のポイントはこちらの記事でより詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。

3-1. 資産に関する要件

厚生労働省への許可申請を行う際に最低限満たさなければならない資産面での要件は次の三点です。

・基準資産額が2,000万円以上ある

・資産から負債を除いた額が負債の7分の1よりも多い

・資産のうち1,500万円以上が現金である

基準資産額が2,000万円以上ある

基準資産額とは、基本的には(資産総額)−(負債総額)のことです。
他に差し引くものもありますが、ここでは割愛させていただきます。
派遣時事業者として認可を受ける場合には、この基準資産額が2,000万円以上であることが必須となります。
「起業の際には資本金が2,000万円以上あれば良い」と言われることがありますが、基準資産額と資本金は異なるものです。
算出の結果、資本金は2,000万円以上あるが基準資産額が2,000万円を下回っているという場合もあります。
事前に正しい算出方法で基準資産額を求め、基準を満たしておく必要があります。
ちなみに、複数の事業者を設立する場合も基準資産額を合算することはできないため、2,000万円が事業所ごとに必要となります。

資産から負債を除いた額が負債の7分の1よりも多い

基準資産額が基準を満たしている場合でも、負債が多い場合には要注意です。
(資産)から(負債)を引いた金額が負債総額の7分の1よりも多くなっているか、しっかり確認しておきましょう。

資産のうち1,500万円以上が現金である

現金の資産が1,500万円を下回っている場合も、認可を得ることができません。
「現金の資産」とは貸借対照表でいうところの「現金」と「預金」を足し合わせたもの。
すぐにお金として動かすことができるお金が1,500万円以上なくてはならないのです。

3-2. 派遣元責任者に関する要件

派遣元責任者にも基準が設けられています。
下記基準が代表的なものです。

・未成年者でなく、住所が一定であること
・良好な健康状態であること
・他人を不当に拘束・束縛しないこと
・公共の場にふさわしくない業務でないこと
・責任者自身が派遣労働者として労働しないこと
・名義借りではないこと
・申請時点で派遣元責任者講習の受講後3年以内であること
・外国人の場合、在留資格があること
・労働者派遣法6条の第1号から第12号に定める欠格事由に該当しないこと

労働者派遣法の「欠格事由」には、暴力団の構成員であることや破産している場合が該当します。
責任者にこの欠格事由に該当する事実がなかったとしても、法定代理人や役員が該当する場合には認可を受けることができません。

3-3. 事業所の広さや立地に関する要件

続いて、事業を行う場所に関する要件です。
申請時には必ず労働局による現地調査が行われますが、下記要件をすべて満たしていなければ事業所としては認められません。

・事業で利用する面積が20平方メートル以上あること
・使用目的が賃貸借契約書の目的と一致していること(事務所用途であること)
・別の法人が同じ場所で業務を行っていないこと
・個人情報を守ることができる環境が整っていること
・風俗営業店の密集エリアに位置していないこと

事業所の面積については、「事業で利用する」部分が20平方メートル以上なくてはなりません。事業に関係ない部分の面積は含まれないため、実際の事業所の総面積はもう少し大きくなることがほとんどです。
また、風営法で規制されている風俗営業店が付近に密集している場合、事業所の立地として不適当だと判断される可能性が高いです。
入居予定のビルや周辺にそのような店舗がないか確認しておきましょう。

3-4. 公正な事業運営のための要件

これは派遣事業を公正に持続していくための要件です。
登録手数料として金銭を要求したり、業務に関係のないサービスへの登録を義務付けたりすると、この要件を満たしていないとみなされます。
厚生労働省の認可基準では、以下のような文言で公正な事業運営を行うための要件を定めています。

・労働者派遣事業を当該事業以外の手段(会員の獲得、組織の拡大、宣伝等)として利用しないこと
・登録時に手数料に相当するものを徴収しないこと

3-5. 個人情報の管理面での要件

情報が非常に大きな意味をもつ現代では、個人情報を適切に管理するのはマストだといえます。
もちろん、派遣事業においても例外ではありません。
具体的には下記のような要件を満たし、「個人情報適正管理規定」を作成しなければ厚生労働省からの認可を受けることはできません。

・派遣労働者の秘密となる個人情報が業務の目的上必要になった場合、その情報を正当な範囲において正確かつ最新の状態で保つこと
・個人情報の紛失や破壊、改ざんが起こらないよう対策を講じること
・個人情報へのアクセスは社内の権限を持った人にのみ行わせ、それ以外の人のアクセスを防止するシステムを導入すること
・派遣労働者からの求めがあった場合や個人情報を保管しておく必要がなくなった場合、個人情報を破棄したり削除したりできるよう備えること

またこれらの内容を派遣従業員の求めに応じて開示する必要があります。
詳細については厚生労働省が発行している要件を参照してください。

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4. 認可取得までの流れと必要書類

派遣事業で起業するにあたって満たさなければならない要件を、厚生労働省の認可基準に照らして説明してきました。
ここからはそうした認可のステップや、その際に必要な書類のリストをご紹介します。
できるだけ確実に認可を得るためにできることは事前準備に尽きます。
特に書類不備で不許可にならぬよう、書類作成には気を配らなければなりません。

4-1. 派遣会社を設立するまでの大まかな流れ

先に触れた「労働者派遣事業許可」を得るためには、「派遣元責任者講習」を受講した派遣元責任者を最低1名置かなければなりません。
また、厚生労働省による審査を受ける前に労働局からの調査が入ることになります。
申請から認可取得まで最短で2ヶ月ほどを要するため、起業をするタイミングや時期を見据えてスケジューリングしておきましょう。

1:派遣元責任者講習を受ける

厚生労働省のサイトに掲載されている講習受講機関で、派遣元責任者講習を受講しましょう。
講習は朝から夕方まで1日で行われます。
この講習を受け、なおかつ要件を満たしている者のみが派遣元責任者として業務に従事できるようになります。

2:必要書類の作成と提出

必要な書類を揃え、記入や捺印の上提出します。
まず、最も大切な書類が下記3種類の申請書および計画書です。

・労働者派遣事業許可申請書(様式第1号):3部(正本1通、写し2通)
・労働者派遣事業計画書(様式第3号):3部(正本1通、写し2通)
(複数事業所を同時に申請する場合、事業所ごとに作成)
・キャリア形成支援制度に関する計画書(様式第3号-2):2部(正本1通、写し1通)

加えて、上記の書類に添付しなければならない書類が18種類あります。
入手や作成自体は難しくありませんが、必要な書類が揃っていなければ不備とみなされるので繰り返しチェックしておきましょう。

・定款または寄付行為
・登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
・役員の住民票
・役員の履歴書
・派遣元責任者の住民票
※役員が兼務する場合は不要
・派遣元責任者の履歴書
※役員が兼務する場合は不要
・派遣元責任者講習の受講証明書
※許可申請日前3年以内に受講したもの
・最近の事業年度における貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書
※会社設立後最初の決算期を終了していない法人は会社成立時の貸借対照表のみ
・最近の事業年度における法人税の納税申告書
※会社設立後最初の決算期を終了していない法人の場合は不要
・最近の事業年度における法人税の納税証明書
※会社設立後最初の決算期を終了していない法人の場合は不要
・事業所施設に関する書類
※建物の登記事項証明書または建物の賃貸借契約書
・個人情報適正管理規程
・自己チェックシート(様式第15号)
・就業規則又は労働契約の該当箇所(写し)
・就業規則(労働基準監督署の受理印があるページの写し)
・派遣労働者のキャリア形成を念頭においた派遣先の提供のための事務手引、マニュアル等又はその概要の該当箇所の写し
・キャリアアップに資する教育訓練(整理用シート)
・企業パンフレット等事業内容が確認できるもの

書類に関する不明点がある場合には、労働局で相談に乗ってもらえる場合もあります。
お近くの労働局に窓口がある場合、書類提出前に相談しておくと安心です。
(参考:神奈川労働局

3:労働局による調査

労働局では主に書類の不備や申請内容に関するチェックを行います。
また、この段階で担当者による現地調査が実施されます。
労働局からの電話に出られなかったことで不審がられることもあるので、この時期は常に電話に出られるよう特に気を配っておく必要もあります。

4:厚生労働省による審査・認可の通達

労働局による調査後に、厚生労働省の審査が始まります。
審査の内容は労働局で行われるものとさほど変わりませんが、気を抜くことのないようにしましょう。
厚生労働省による審査後に労働政策審議会の意見聴取が行われ、最終的な可否が決定されます。
申請が認められても認められなくても通達はされるので、その内容で結果を知ることとなります。

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5. 書類作成時のポイント

最後に、特にご相談の多い2つの書類について、記入時のポイントを簡単にご説明します。

5-1. 労働者派遣事業計画書

労働者派遣事業許可を受ける際にはこの「労働者派遣事業計画書」が必要になります。
これは簡単に言えば派遣会社を適切に運営し、そこで働く人の労働環境や待遇を良く保つための計画書です。
この書類を作成する上で最も大切なことは「公正に事業を行い、従業員の環境をより良くするための」計画を立てることです。
ひとつひとつの細かい記入事項はありますが、どれも派遣事業者を適正な道に導くためのもの。そうした本質的な部分を見据えて書類を作成するのが大切です。

そして許可を得ることができた後も、毎年6月末までに「労働者派遣事業報告書」の提出が義務付けられています。
計画と実行、そして次の計画の立案までを1年のサイクルで行わなければならないのです。
こちらは「労働者派遣事業報告書」を作成する際のポイントをまとめた記事ですが、根本の部分は「労働者派遣事業計画書」と同じです。
ぜひより詳しいポイントを知りたい方は参考にしてみてください。

5-2. キャリア形成支援制度に関する計画書

こちらは派遣会社で従業員として働く人のキャリア形成を促進するための計画書です。
計画書では実際のカリキュラムの内容を記入することになるので、自社で行うキャリアアップ訓練の内容を把握し、嘘偽り無く記入することが求められます。
「派遣の学校」では充実した教育訓練プログラムを用意しており、もちろん「キャリアアップ形成支援制度に関する計画書」に対応したカリキュラムも多数ご用意しております。

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6. 万全な事前準備でスムーズな開業を

起業に必要な資格や手順はシンプルではありますが、それに伴う作業にはかなりの労力や時間を割くことになります。
手続きや審査の際に慌てないようにするためにも、スムーズに開業するためにも事前準備は十分すぎるほどしておきましょう。
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