CBT試験をご存じですか?
CBT(Computer-Based Testing)試験は、従来実施されていた問題用紙やマークシートを使用した試験形式に代わって、コンピュータ・インターネットを利用して行われる新しい試験方式です。
台風や地震などの災害の影響を受けにくいCBT試験は、テストセンター・試験会場でより手軽で効率的に試験を実施することができます。
また、自宅やそのほかの場所などでもCBT試験を実施できる場合もあり、検定や資格試験、社内試験等で広く利用されるようになっています。
この記事ではCBT試験の概要と活用するメリット、導入事例をご紹介します。
CBTとはコンピュータ・インターネットを利用した試験のこと
CBTとは「Computer Based Testing」の略称で、試験をはじめ、受験の申し込み、採点、合否通知まで、試験の工程のすべてをコンピュータとインターネットを利用して行うことができます。
コンピュータ・インターネットを通じて試験を行う場合は、CBTの他に、「IBT(Internet Based Testing)」や「オンライン検定」、「オンライン試験」とも呼ばれます。
CBTの受験・解答方法
CBTでは、試験問題はコンピュータのディスプレイ上に表示されます。
受験者ごとに異なる試験問題を出題したり、あるいは解答の選択肢の順番を変えて表示したりすることができます。
また、文章だけでなく、動画や画像、音声などを利用した多様な試験問題を出題できるのも、CBTの大きなメリットのひとつでしょう。
解答は、記述式のものはキーボード、選択式はマウスを使用して行いますので、受験者はキーボード入力やマウスクリックなどの基本的な操作ができる必要があります。
また、スピーキング問題がある場合はヘッドセットを装着して、マイクに音声を吹き込んで解答します。
CBTを行う場所
CBTは一般的に全国各地にあるCBTテストセンター・試験会場で行われます。
また、インターネットを利用して自宅やそのほかの場所から、個人のPCやスマホ、会社のPCで受験する方法が用意されている場合もあります。
好きなときに好きな場所で試験を受けることもできるため、eラーニング学習後の実力判定試験や集合研修後のテストなど、広く用いられています。
試験の主催者にとってのCBTのメリット
CBT導入によって、試験問題の印刷、保管、輸送、および配布の手間やコストが省け、採点や集計も効率化できるため、資格試験や社内試験にも導入されています。
CBTのメリットを、試験の主催者と受験者、それぞれの観点から見てみましょう。
まず、試験の主催者のメリットは以下のようなものになります。
管理業務を効率化できる
通常の試験であれば、試験を開催するたびに以下のような管理業務が必要でした。
- 問題用紙の郵送・回収
- 試験会場の手配
- 試験監督者・採点者の配置
- 試験申し込みの受付
- 受験料の決済
- 試験結果の集計・評価・通知
- 試験データの管理
しかし、インターネットを利用したCBTであれば、こういった管理業務にかかる手間を減らすことができます。
これまで紙でテストを行っていた場合は、CBTに切り換えることで問題用紙の印刷、保管、輸送、配布をはじめ、試験の申し込み受付や試験データの管理まで運営担当者の負担を減らす効率的な試験運営を実現します。
試験問題に動画や画像、音声などを使用できる
紙を使用した試験では困難だった、動画や画像、音声などを利用した試験問題を出題することができ、出題問題のバリエーションが大幅に広がります。
不正対策が整備されている
多くのCBTテストセンター・試験会場には監視カメラが設置され、試験監督が試験会場を巡回することで、メモの使用・会話・なりすましなどによる不正やカンニング対策をしています。AIや顔認証などの技術を活用して不正防止対策を行うこともあります。
ここでは、行われることの多い不正を分類し、それぞれの対策例をあげていきます。
・スマホやメモ用紙を使ったカンニングへの対策
解答を書いておいたメモ用紙を試験中に持ち込んだり、スマホを使って調べる・聞くといったカンニングが行われるケースがあります。
CBTテストセンターでは監視員・監視カメラによる監視があるため、ある程度防止することができます。
また、コンピュータのWebカメラを使用して、受験者の視線の方向や顔の傾きといった動きを検知するAI監視サービスもあります。
・他者から正答番号を聞いて解答するカンニングへの対策
他者から正答番号を聞くことへの対策は、監視員の巡回によってある程度防ぐことができます。また、受験者同士の距離を空けたり、パーテーションで仕切ったりなども有効です。
このような対策を行ったとしても完全ではありませんので、受験生ごとに試験問題や回答番号の出題順をランダムにしたり、出題する問題自体を替えたりといった対策も併せて行うとよいでしょう。
ただし、出題する問題自体を替える場合、問題の難易度による不公平が生じることも考えられますので十分に検討する必要があります。
問題の難易度を調整するひとつの例として、模擬試験や過去の受験の結果を元にして問題ごとの正答率を導き出し試験全体の正答率を揃える方法があります。
・PCの機能を利用したカンニングへの対策
CBT試験会場にあるPCを使う場合、インターネット検索の禁止やブラウザの別タブへの遷移禁止など、アプリケーションの使用制限をする機能が備わったソフトウェアを活用することで、試験中に解答で必要となる情報を検索したり、事前に保存しておいたデータを閲覧したりなどができなくなります。
・なりすましへの対策
別人が受験をする「なりすまし」は、本人確認をすることが対策となります。
顔認証システムや免許証等の公的証書提示による本人確認によって、なりすましによる不正受験を防止できます。
問題用紙の紛失・漏えいなどのリスクを軽減できる
試験問題は受験者のPCに受験開始時に表示・終了時に非表示にされるため、ペーパー試験と比較すると、保管管理による問題用紙の紛失や漏えいのリスクは軽減されます。
さらに、試験で出題される問題の出題順や選択肢の順番を受験者ひとりひとりにランダムで出題することで、各人の正答番号が不規則になります。試験問題の情報を他者と共有されたとしても正答できなくなるため、情報漏えいを未然に防ぐことへの一助となります。
また、CBT試験の試験問題・解答が、CBT試験サービス提供者によって、暗号化し保存されるなど情報セキュリティ対策が実施されていれば、なお安全に運営することができます。
人による採点がなくなり、採点ミスをなくすことができる
試験後の解答データは、すぐにサーバーに送信され、採点と集計作業が行われます。
試験の採点は選択式問題であれば自動的に行われ、人為的なミスの発生をなくすことが可能です。
記述式問題については、キーボードで入力された解答を採点するため、受験者の手書き文字を読むのが難しい場合に発生する判別作業での誤認が軽減されます。
全国に展開することで試験の受験機会を増やすことができる
全国展開することで、受験者は居住地等から近い試験会場と受験日時を選択でき、受験会場までの移動時間や移動費用の負担が軽減されます。そのため、受験自体のハードルが下がり、より多くの受験者を獲得できるようになります。
通常、全国の試験会場でペーパー試験を開催する場合は準備のために多大な労力が必要ですが、CBTテストセンターは全国に拠点があり、運営委託も可能なため、手軽に全国展開が可能です。
また、従来の試験体系では試験問題の情報統制上、試験の実施は一度に限られていました。しかし、CBTでは受験者ごとに問題を変更・ランダム出題することができるため、試験を実施する回数も増やせるようになりました。厳格な資格試験では難しいケースはありますが、重要度の低い民間試験などでは試験回数を増やして実施されるケースもあります。
受験者にとってのCBTのメリット
次に、受験者にとってのCBTのメリットを見てみましょう。
採点が効率化されるため受験後短期間で結果がわかる
採点が効率化されるため、受験後、短期間で結果が判明します。試験問題が選択式の場合には、受験直後にわかることもあります。
申込みをすれば比較的すぐに受験できる
申込用紙で受験申込する場合に比べて、Web経由でのCBTの申込みはすぐに受理されるため、申込みから実際の受験日までの期間が短縮できます。
手軽に受験できる
受験者がCBT試験を受ける場合、キーボードやマウス、マイクなどを用いて解答するため、下記のようなメリットがあります。
- 筆記用具は持参しなくてよい
- 消しゴムを使わず、解答の書き直しが楽
自宅などテストセンター以外から受験する「オンラインCBT試験」のメリット・デメリット
最新技術を活用して不正防止が可能になったことから、CBTテストセンター・試験会場だけでなく、自宅やオフィス、教室などからオンラインでCBT試験を行う検定・認定試験も増えてきました。
特に近年では、時間と場所に捉われないオンラインCBT試験は、民間が行っている検定試験の一部や社内試験、資格試験での導入が進んでいます。
メリット
自宅などテストセンター以外から受験するオンラインCBT試験は、前章であげた試験の主催者と受験者のメリットに加えて、以下のような大きなメリットもあります。
・CBTテストセンター・試験会場を利用するコストが削減される
CBTテストセンター・試験会場や試験官の手配の必要がなくなるため、人件費や会場費などのコストを大幅に削減できます。
さらに、自然災害や悪天候といったトラブルで試験が実施できなくなった場合、振替受験の手配といった、無駄な作業工数の軽減に期待できます。
・受験会場や日時の選択肢がより広がる
受験会場から遠くに住んでいる方は、交通にかかるハードルのために試験を諦める可能性があります。
自宅などテストセンター以外から受験するオンラインCBT試験であれば、特定の場所や日時に制限されることなく試験を実施することが可能です。
デメリット
試験監督や監視カメラが設置されているCBTテストセンター・試験会場とは異なり、それぞれの受験者が不特定な場所で受験を行うため、不正・カンニングをしやすくなることはデメリットになります。
実際に、2022年に起きた「替え玉受験」の事件のようにオンライン試験で不正が行われるケースもあり、たびたび不正受験が問題視されています。
また、PCやWebカメラといったデバイスを受験者自身で用意する必要があり、デバイスを受験者自身が正しく扱えることも必要になります。
そのため、基本的なITリテラシーを受験者に求めることはデメリットと言えるでしょう。
また、正常に受験しているにも関わらず、カメラの角度によってシステムが顔を認識できずエラーが生じる可能性もあります。
セキュリティ面でも、顔認証するとはいえ、写真でも認証ができてしまうような精度であるなどのシステムの仕様次第では、なりすましが可能になってしまうでしょう。
こういった問題を解消するためにも、前章でご紹介した不正受験対策はもちろん、以下の対策を講じるとよいでしょう。
・スマホやメモを使用したカンニングへの対策
360度カメラで撮影して不正受験がないかを監視したり、リモート環境下の監督官が受験前に、受験者の手元や部屋の中をWebカメラで映すように指示したりなどで、不正防止をすることが可能です。
またAI監視サービスもあり、自動的に怪しい動きを検知するようなサービスも始まっています。
・なりすましへの対策
顔認証システムやeKYCなどで本人確認ができます。
顔認証システムは、PCのWebカメラやスマートフォンのカメラを使用して、ログイン時や受験中に撮影した顔写真を照合して「なりすまし」の防止をします。
eKYCでは、多くの場合、本人確認書類の確認をWebカメラやスマートフォンのカメラで実施します。そのほかにも過去に本人確認したことのある銀行や携帯電話会社などに、本人確認情報をユーザー同意のもとでユーザーが指定する事業者へ提供するといった形も可能な場合があります。
プロシーズが提供する「Testable」では、受験者と登録した顔写真の照合・なりすまし防止をする顔認証機能を搭載しています。
導入実績も豊富にございますので、ぜひ一度お問い合わせください。
・受験者が適切な受験環境を整えるための対策
PCやスマートフォン、Webカメラが使用できるかどうかなどを、あらかじめ確認・予行演習をすることが大事です。また、試験当日に使用するデバイスが推奨環境に沿っているかを併せて確認するといいでしょう。
実際にログインができるか受験ができるかといった確認まで行うことでより「受験できない」ケースを緩和することができます。
推奨環境を確保できないといった際にはPCのレンタルサービス等を利用する検討も必要になる場合があります。
CBT試験の導入事例
CBT試験の導入事例をいくつか見てみましょう。
英検
日本英語検定協会は、英検3級~準1級を、ペーパー試験と並行してCBTでも行っています。
ペーパー試験では、一次試験でReading、Writing、およびListeningの試験を受けたあと、別日程でSpeakingの二次試験を受ける必要がありますが、CBTではヘッドセットを使用することにより、すべての試験を1日で終えることができます。
漢検
日本漢字能力検定では、2級~7級までをCBTで受検できます。CBT導入により、従来の年に3回の検定日に限定されず、都合のよい日を選んで受検できるようになりました。
教員免許状更新講習 北海道教育大学様
文部科学省の教育事業を受託され、教員免許状更新講習を行っていらっしゃいます。
「顔認証機能」や「決済機能」を取り入れたオンラインシステムを導入しており、北海道以外の方にも学習機会を提供できる仕組みを構築しています。
弊社のLMS「LearningWare」をご利用いただいて、講習の教材郵送などの業務負担が軽減され、効率よくオンライン講座の運用をされています
ダスキン ミスタードーナツ事業様
「ミスタードーナツカレッジ」という教育専門施設を創設され、加盟店を対象とした研修を行っていらっしゃいます。ライセンス制度を設けており、取得することで「ミスタードーナツ」のライセンスにおけるキャリアアップを図る仕組みを採用しています。
弊社のLMS「LearningWare」をご利用いただいて、eラーニングで完結できるライセンスや、eラーニングと集合研修を両方修了することで得られるライセンスなどを運用されています。
⇒ ダスキン ミスタードーナツ事業 様事例について詳しく見てみる
トーホー様
弊社のLMS「LearningWare」をご利用いただいて、自社社員のために作成したコーヒーの販売検定を行っていらっしゃいます。
その他のCBT導入事例
- 情報検定(J検)
- パソコン検定
- マイクロソフト認定プロフェッショナル
- ITパスポート試験
- ドットコムマスター
- シスコ技術者認定
- CAD利用技術者試験
- ビジネス能力検定ジョブパス1級
- 実用英語技能検定
- 日商プログラミング検定
- 日商ビジネス英語検定
など
今後の動向
CBT試験は今後教育現場に進出することが予想されます。
2022年11月に文部科学省が発表した資料には、「全国的な学力調査のCBT化の検討」といった内容が記されています。
最近では、全国の医学部生に実施される共用試験においてもCBT試験が導入されていたり、小学生対象の全国学力・学習状況調査や大学入学共通テストなどで、CBT試験の実施ができないか検討が進められていたりします。
今後教育機関におけるさまざまな試験においても、CBT化が進む可能性は高いといえるでしょう。
その一方で、CBT試験で用いられるテクノロジーである「顔認証」や「AI監視」は自動化などのメリットがある一方で、まだ精度が高いとは言い切れません。
今後の不正防止対策として、より精度の高いものにしていく取り組みが求められます。
CBTについて詳しく知りたい方はお問い合わせください
コンピュータを使用して試験を行うCBTは、資格の検定・認定試験や社内試験で広く利用されています。
顔認証による本人確認を利用してWeb上で行う「CBT」に切り替えれば、コストを大幅に削減できるほか、受験生の増加も期待できます。
「CBTについてもっと詳しく知りたい」という方は、ぜひお問い合わせください。
プロシーズでは、CBTの導入支援を行っているため、教育ノウハウや手法などのご相談も大歓迎です。
また、オンライン試験を初めて実施する方に向けて、安全に試験運営ができるチェックリストをご用意しております。