オンライン試験の替え玉受験で有罪判決。今後の不正対策とは

近年、コロナ禍も影響し急速に世間に浸透したオンライン試験。今や就職活動における採用試験はもちろん、検定試験や企業の昇進試験などでも活用されるようになってきました。

一方で、替え玉やカンニングなどの不正行為が発生するリスクの高さについても問題視されています。

替え玉受験とは、受験者の代わりに他者が受験者本人になりすまして試験を受けることです。
実際に2022年には採用試験の”替え玉受験”を請け負った逮捕者も出ており、試験主催者は不正防止に向けて取り組みを進めています。

そこで本記事では、替え玉受験の実態やオンライン試験における不正防止の対策についてご紹介します。

替え玉受験で初の摘発事件、明らかになった実態

オンライン試験における替え玉受験の問題が広く世間に認知されるきっかけとなったのは、2022年に会社員の男が就職活動中の女子大学生になりすました替え玉受験を行い、初めて逮捕・有罪判決になった事件です。男は「京都大大学院卒、ウェブテ請負経験4年、計4000件以上、通過率95%以上」などとうたい、SNS上で就活生の依頼者を募り、オンライン試験のIDとパスワードを受け取って1件数千円で替え玉受験を行っていたとのこと。

この事件が発生する以前から、オンライン試験での替え玉による不正行為は問題視されていましたが、全国で初となる替え玉受験の摘発がされたことで、その犯行経緯や実態が明らかとなりました。

昨今、オンラインを活用した採用試験が増えており、上記のような替え玉受験も容易になっています。
では、なぜ替え玉受験のような不正行為が発生してしまうのでしょうか。
次の章で解説します。

オンライン試験は不正行為がしやすいと思われている

なぜオンライン試験で、不正行為が行われるのでしょうか。
カンニングが多く行われる大きな要因としては「監視の不在」があげられます。

イギリスの法律グループ Alpha Academic Appeals は、2022年に900人以上の英国の大学生を対象に、オンライン試験の不正行為について調査しており、およそ16%の学生が大学のオンライン試験でカンニングをしたと明らかにしました。
また、 調査に参加した学生の79%は、試験会場よりもオンライン試験の方がカンニングをしやすいと考えていました。

報告された多くの不正行為は、試験中に友人から電話やメッセージで回答を聞いたり、別のデバイスで回答を検索したりなどの単純なものでした。

試験中の現場に試験監督や同じ受験者の監視がないオンライン試験は、受験者にとって不正行為をしやすい環境であるといえるでしょう。

替え玉受験をすると犯罪になる

替え玉受験は、単なる不正行為ではありません。本人になりすました実施者はもちろん、依頼した側も罪に問われてしまうことがあります。

ここではオンライン試験で、替え玉受験を行った場合に問われる可能性のある犯罪をご紹介します。

実行者が問われる罪

  • 電磁記録不正作出・同提供罪

依頼者が問われる罪

依頼者が問われる共犯としての区分は、以下のどちらかになります。

  • 共同正犯・教晙犯
  • ほう助犯

何が問題だったか

人々の行動が制限されたコロナ禍において、多くの企業が採用活動や受験、資格取得、昇格試験、更新試験などのためにオンライン試験を活用しました。

ただ、一方でテスト実施時に替え玉受験やカンニングなどの不正が横行するリスクもあり、実際に逮捕者がでています。
これらの不正行為は、主に不正対策が脆弱だったことに起因しています。

オンライン試験の不正対策が脆弱だった

オンライン試験で不正行為が行われているのは、不正対策が脆弱だったことが主な理由です。例えば、監視の仕方が不十分なために、受験者が替え玉受験をはじめとした不正行為をしてしまう場合もあります。

替え玉受験の場合は、オンライン上に答えを入力するだけの試験形式であれば、受験者本人以外の人が解答をしても発覚しない危険性があります。

またカンニングに関しては、自分の手元にあらかじめ教科書や参考書などの資料を準備しておいて参照したり、スマートフォンで検索して解答を導き出したりすることができてしまいます。

このように、受験者の監視をしていないオンライン試験は、自分以外の力やツールに頼って受験することが容易になっているのです。

こういった不正を行う可能性のある人たちは、決して少数派ではありません。就職活動や資格試験などが人生にとって重要な意味を持っていると感じている受験者は多く、自分にとって失敗できない、絶対に合格したい試験だからこそ、オンライン試験で不正を行ってしまうのでしょう。

替え玉受験以外の不正が行われる可能性も

オンライン試験中に行われる可能性のある不正は、替え玉受験以外にもあります。
代表的なのが、カンニングと試験問題・解答の流出です。

カンニング

試験監督がいない場合のオンライン試験は、カンニングが起きやすい状態にあります。
事前に用意したカンニングペーパーを見たり、試験問題の解答をブラウザで検索したり、協力者から情報提供されたりなど、カンニングには様々な手法が用いられるケースがあります。

試験問題・解答の流出

試験問題や解答の流出は試験日以前に不正アクセス等で発生するケースや、同じ内容の試験を前期・後期に分けて実施する運用をした場合に前期の受験者が後期の受験者に情報を提供することで起きるケースもあります。

オンライン試験における不正対策は?

ここからは、オンライン上で試験を実施する場合に有効な不正対策を6つご紹介します。
いずれも不正を防止するために一定の効果が得られる対策なので、受験者の能力を正しく測るために導入を検討してみてください。

顔認証

これは替え玉受験を防止するために本人確認をするための仕組みです。
AIを活用したWEBカメラで顔認証を行うことで、エントリー時に提出された本人写真と、試験を受験している人物が一致しているかどうかを判断します。

プロシーズが提供しているオンライン試験システム「Testable」には、顔認証による不正受験・替え玉受験の検知などの不正行為を防ぐ機能が用意されているため、替え玉受験を懸念されている事業者様にはおすすめです。

インターネット検索を禁止

インターネットのブラウザにおいて、試験の画面を開いているタブとは別のタブを開くことを禁止することで、試験問題の解答を検索するという不正を防ぐことが期待されます。また、併せて文章のコピーや貼り付け機能に制限をかければ、事前に用意した解答を利用した不正をしにくくするといった効果も狙えるでしょう。

問題のランダム出題・変更

万が一、問題や正答番号の流出が起こってしまった場合でも、出題される問題がランダムに表示されたり、出題順が受験者ごとに変わったりすれば、不正をしにくくすることができます。

1回の試験で出題する問題数よりも多めの問題を用意しておき、試験を実施するたびに別の問題を出題する方法がベストですが、同じ問題ではないため、平等な評価を与えることは難しくなります。不公平にならないよう各問題の難易度調整には細心の注意を払わなければなりません。

オンライン上の監視員

オンライン試験において発生している不正の多くは、受験者が「誰にも見られていない」と思うことが原因で起こっているといっても過言ではありません。そのため、受験者のパソコンに内蔵されたWEBカメラを用いて、オンライン上で監視を行っている試験主催者もいます。

監視員は、受験者が試験中に不審な挙動や離席、視線の移動などの怪しい動きをしていないかをチェックします。もし試験中に怪しい動きがあった場合は、チャットで注意したり試験を終了させたりと、すぐに対応できるのが特徴です。

ここで大切なのは、試験中に監視をしていることを受験者に伝えること。テスト画面や事前資料で、受験者の目に留まりやすい配置や表記で監視員の存在をアピールし、替え玉受験をはじめとした不正行為への注意喚起を行いましょう。試験中も誰かに「見られている」という認識を与えることで、受験者が緊張感を感じるため、より会場での試験に近い環境下でテストを行うことができます。

AI監視

近年、AI(人工知能)に関する技術のめざましい進歩が世間を賑わせていますが、AIはオンライン試験における不正防止にも一役買っています。

たとえば、「動体検知AI」を使えばWEBカメラの画角内にいる受験者以外の人物やカンニングペーパーなどを検知することができます。また、「目線検知AI」であれば、受験者の不自然な動きやテスト画面以外を頻繁に見ていないか識別でき、オンライン試験のカンニング防止策として有効です。

オンライン試験の監視においてAIを活用するメリットは、低コストで不正の検知をできることにあります。人的・金銭的コストを抑えつつ不正を防止したいと考えている企業の方は必見です。

一斉受験の実施

いつでも、どこでも受験できることが魅力のオンライン試験ですが、あえて受験日時を定めて一斉に試験を開催することで、試験問題の流出を防ぐことが可能です。
いつでも試験を受けられる受験方式は利便性が高い一方で、試験問題が漏洩してしまった場合に不正が生まれやすくなってしまいます。試験の公平性を保つためにも、重要な試験の場合は同日での試験実施がおすすめです。

ただし、多くの受験者が一斉にシステムにアクセスするとサーバに負荷が高まり、サーバダウンする(システムが利用できない状態になる)恐れがあります。あらかじめ、想定の受験者数が一斉アクセスをしても耐えられるかをシステムベンダーに確認しておくとよいでしょう。

プロシーズが提供する「Testable」では、10,000人を超える大規模一斉試験が可能です。導入実績も豊富にございますので、ぜひ一度お問い合わせください。

情報セキュリティを高める

試験主催者は不正アクセス等により試験情報が漏れないよう社内だけでなく、社外に対しても情報セキュリティの基準を設ける必要があります。
社内でISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の取得を検討するのはもちろん、オンライン試験システムや連絡ツールなどを使用する際は、システムベンダーがISMSの取得をしているか、データベースは暗号化されているか、などリストを作って対応するとよいでしょう。

プロシーズではISMSを取得し、また定期的な脆弱性診断や負荷検証を実施しています。安心してご利用いただけるよう日々取り組んでいます。

システムをうまく活用して不正対策を

今回は、替え玉受験をはじめとした不正行為の手口や、それらを防ぐための方策をご紹介しました。不正の多発は、企業の信用問題にも関わります。不正防止機能が搭載されたシステムの導入も視野に入れ、不正対策を行いましょう。

オンライン上で10,000人以上の同時試験を実施するオンライン試験サービス「Testable」は受験者と登録した顔写真の照合・なりすまし防止をする顔認証機能や、試験以外の画面を開くことを禁止するカンニング防止機能などを搭載しています。
ぜひお気軽にお問い合わせください。

また、不正対策も考慮した、安全にオンライン試験運営ができるチェックリストをご用意しております。

オンライン試験運営チェックリスト
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