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派遣元責任者とは?~役割や要件・講習の必要について~


派遣会社を運営する上で必ず設置する必要がある「派遣元責任者」。
初めて派遣元責任者講習を受ける方や、今から派遣会社や事業所を立ち上げ、事業許可を得る方々のために、派遣元責任者を設置する目的や要件・講習の必要性をまとめました。
派遣元責任者講習を選ぶポイントも解説していますので、ぜひご覧ください。

1. 派遣元責任者とは

派遣元責任者とは、労働者派遣事業者(派遣元事業主)に選任された、派遣労働者の適切な雇用管理や保護を担う人をいいます。
これは労働者派遣法で定められたもので、事業所ごとに配置する必要があり、【派遣労働者100人】に対して【1人以上の派遣元責任者】を選任することが義務付けられています。

派遣業務を行うなかで、派遣労働者と派遣先の企業との間でトラブルが起こったり、苦情が出たりすることもあるものです。そのような際には、派遣先の企業と労働者との間で生じるさまざまな問題に対して、迅速な処理や解決を図ることが派遣元責任者の役割となっています。

2. 派遣元責任者を設置する目的と背景

現在、労働者派遣事業の許可を取るためには、『派遣元責任者』を選任することが必要となっています。

2-1. 目的

労働者派遣法36条に、派遣元事業主が講ずるべき措置として派遣元責任者を選任することが明記され、適正な雇用管理を確保する目的で「派遣元責任者」を選任することが定められています。

2-2. 背景

労働者派遣法は、1985年(昭和60年)制定され、派遣元責任者は、派遣労働者の雇用管理を適正に行うこと、労働者の保護を目的として設置されました。

2つの派遣事業

派遣法が制定された昭和60年は、バブル景気で派遣業も好景気。
当時の労働者派遣事業は、届け出制である『特定労働者派遣事業』と、許可制である『一般労働者派遣事業』の2種類に区分されていました。

一般労働者派遣事業は、厚生労働省の認可を受けたうえで運営することが求められているのに対して、特定労働者派遣事業は届出さえ出していれば許可は不要となっていたのです。つまり、派遣事業のうち、特定労働者派遣事業の場合は、派遣元責任者は設けられていない状態でした。

特定派遣が廃止され、派遣を行う場合は派遣元責任者の設置が必須に

しかし、その後、バブルがはじけ、さらに2008年のリーマンショックによる派遣切りや雇い止めなどが社会問題となっていました。

そんな中、2015年に特定派遣が廃止。派遣企業はすべて一般労働者派遣事業として許可を得なければいけなくなりました。
一般労働者派遣事業を行うには様々な要件がありますが、つまり、そのうちの一つである派遣元責任者の設置が必須となったのです。

特定派遣が廃止の背景には、派遣労働者の立場を向上させる、安定した働き方にするためでした。逆に言えば、それまでの派遣労働者の立場は非常に不安定であったのです。

特定派遣は、一般派遣と違って【期間の定めのない雇用】となり、安定しているようにみえますが、実際のところ、【期間の定めのない】ことは、必ずしも正社員として雇用しなければならないということではなく、派遣元企業によっては契約社員や準社員といった雇用形態で派遣労働者を雇用するところも多くありました。
このことから、労働者は安定していない立場のまま働かざるを得なかったのです。

また、特定派遣事業は国に届出をしさえすれば、特に何か要件をクリアする必要がなく事業が開始できることもあり、資金力の低い企業が派遣事業を行うケースも多く見られました。
これにより、ひとたび業績が悪化すると、特定派遣労働者への給与支払いをせずに人員整理と称して解雇する会社もあったのです。

特定派遣は、本来であれば労働者にとって【期間の定めのない雇用】として、安定した働き方ができる雇用形態のはずが、実情は労働者を不安定な立場に陥らせてしまう問題があったのです。

3. 派遣元責任者の選任

派遣事業を行うためには、事業所ごとに派遣元責任者を選任する必要があります。
また、派遣元労働者100人ごとに1人以上を選任しなければいけません。

では、その派遣元責任者はどのように選べばよいのでしょうか。

派遣元責任者を選任する際には

  1. 欠格事由に該当しない人
  2. 3つの要件に該当する人

である必要があります。

3-1. ▼欠格事由

  • 禁固刑又は労働基準法違反などにより懲役・罰金の刑に処され、その執行を受ける事ができなくなってから5年を経過しない者
  • 成年被後見人、被保佐人、破産者で復権を得ない者
  • 労働者派遣事業の許可を取り消されてから5年を経過しない者
  • 未成年者である者
  • 外国人で一定の在留資格のない者

上記欠格事由に当てはまらない人で、下記の要件を満たす人となります。

3-2. ▼派遣元責任者の要件

  1. 派遣元責任者の業務に専任できること
  2. 3年以上の労務管理経験があること
  3. 3年以内に、派遣元責任者講習を受講していること

派遣元責任者の業務に専任できること

要件1つ目について、派遣元責任者は、派遣先企業や派遣労働者からの苦情・相談があった場合、いつでも対応ができるよう体制を整える必要があります。
そのため、派遣元責任者自身が派遣労働者として労働することはできません。
また、他の会社の役員や従業員となっている場合も、派遣元責任者としては認められませんので注意しましょう。

許可更新など手続きマニュアルでは、「派遣元責任者が苦情処理等の場合に、日帰りで往復できる地域に労働者派遣を行うものであること」
と記載があります。派遣元責任者が日帰りできる範囲であることが求められています。これは飛行機での往復でも問題ないというような回答もありますが、範囲の規定というよりは、責任を持って業務ができることが重視されています。

3年以上の労務管理経験があること

要件2つ目の「3年以上の労務管理経験があること」とは次のような経験のことを指します。

A.人事または労務の担当者(代表者や管理職など)
B.派遣事業で、派遣労働者や登録者の労務を担当していた者
C.その他、次のような経験がある者

a.成年に達した後、職業安定行政又は労働基準行政に3年以上の経験を有する者
b.成年に達した後、民営職業紹介事業の従事者として3年以上の経験を有する者
c.成年に達した後、労働者供給事業の従事者として3年以上の経験を有する者

3年以内に、派遣元責任者講習を受講していること

要件3つ目の「3年以内に、派遣元責任者講習を受講していること」については、派遣元責任者講習を受けてから3年経過している人は、再度受講しなければいけません。また、新しく派遣事業を行うにあたっては、申請に先立って派遣元責任者講習を受けておく必要があります。
予約制となっていますので、早いうちにスケジュールを確認しておきましょう。

実際に選任する際には、派遣会社の社員であり、事業所の中でも管理職以上である方が妥当でしょう。
また、営業担当と別の方にしておいた方が良いでしょう。なぜなら、派遣社員からの苦情に関しては営業担当に関する内容のものも多いためです。

4. 製造専門派遣元責任者について

製造業への派遣を行う場合は、『製造専門派遣元責任者』を選任する必要があります。
これは、製造業務では危険な機械を操作したり、有害物質を取り扱ったりすることがあるため、派遣元責任者とは別に『製造業務専門の責任者』として選任が義務付けられています。

要件などは通常の派遣元責任者と変わりません。
派遣労働者100名に1人以上派遣元責任者を選任するのも同じく、製造業務に従事する派遣労働者100名に1人以上製造専門派遣元責任者を選任する必要があります。

ただし、『製造業務専門派遣元責任者』のうち1人は『派遣元責任者』を兼任することが可能です。

つまり、1事業所に、【50名の派遣労働者】と【50名の製造業に従事する派遣労働者】の合わせて100名いる場合、製造業に従事する人がいるので『製造業務専門派遣元責任者』1人は必須、100名で1人の『派遣元責任者』を選任する必要がありますが、兼任ができるので、『製造業務専門派遣元責任者』1人を選任すればよい、ということになります。

5. 派遣元責任者の仕事内容

派遣元責任者が行う職務についてご紹介します。

(1)派遣労働者であることの明示

派遣労働者として雇入れを行うことを雇用契約書などで明示します。
紹介予定派遣の場合は、紹介予定派遣であることを明示しておきます。

(2)就業条件などの明示

派遣労働者に就業条件と派遣受入期間の制限に抵触することになる最初の日を通知します。

(3)派遣先への通知

派遣先企業に派遣労働者に関する氏名や性別、年齢に関する事柄などの情報を通知します。

(4)派遣先および派遣労働者に対する派遣停止の通知

派遣受入期間の制限に抵触する場合は、1ヶ月前から前日までの間に派遣先企業と派遣労働者に、労働者派遣を行わないことの通知が必要です。

(5)派遣元管理台帳の作成、記録、保存

派遣労働者の氏名・派遣先の名称・派遣期間・就業時間など、法令で定められた事項を記録しておくための派遣元管理台帳を作成します。
なお、派遣元管理台帳は、派遣を終了した日から3年間保管しておくことが義務付けられています。
ちなみに決まったフォーマットはありませんので、項目が揃ってさえいれば問題ありません。
パソコン上のファイル、電子記録でも認められています。

(6)派遣労働者に対する必要な助言や指導実施

派遣労働者に助言や指導を行う内容としては

  • 労働者派遣事業制度や労働者派遣契約の趣旨や内容
  • 派遣会社や派遣先企業が講じるべき措置

などに関することが挙げられます。
または、労働者派遣法改正があった際には、改正点について説明会や文書の配布などによって周知を行うことが求められます。
2021年1月の派遣法改正では、キャリアアップ教育訓練とキャリアコンサルティングを行うことを説明する義務が追加されました。

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(7)派遣労働者からの苦情の処理

派遣労働者から労働環境や労働条件などに関して苦情を受けた際には、派遣先企業に通知を行うなど、適切な処理を行うことが求められます。

(8)派遣先との連絡・調整

派遣就業に関して問題が生じた際に、派遣先企業との調整を行います。

(9)派遣労働者の個人情報の管理

派遣労働者の個人情報が正確で最新のものとなるように管理を行い、不要な個人情報を破棄します。
また、派遣労働者の個人情報への不正アクセスが行われないように管理を求められます。

(10)派遣労働者についての教育訓練の実施及び職業生活設計に関する相談の機会の確保に関すること

派遣労働者のキャリアアップにつながる教育訓練を年間8時間、入職から3年間実施する義務があります。
また、キャリアコンサルティングの窓口を設けて、派遣労働者が希望する場合はキャリアコンサルティングを実施する必要があります。
キャリアアップ教育訓練は、毎年6月の事業報告書での報告義務と、派遣許可更新時には、キャリアアップ教育訓練計画を提出する必要があります。
キャリアアップ教育訓練は、段階的かつ体系的な教育訓練の実施が求められます。

(11)安全衛生に関すること

派遣労働者の安全衛生が確保されるように、連絡や調整を行います。
安全衛生教育の実施や、健康診断、また労災事故などが発生した際には、対応状況の確認を行うといったことが含まれます。

6. 義務化されている派遣元責任者講習

派遣元責任者となるには講習を受けることが必須です。
派遣元責任者講習の内容と受講方法について紹介します。

6-1. 派遣元責任者講習の目的

労働者派遣法第36条により選任を義務付けられている派遣元責任者に対して、法の趣旨、派遣元責任者の職務、必要な事務手続等について講習を実施しています。
派遣元事業所における適正な雇用管理及び事業運営の適正化に資する(役立つ)ことを目的としています。

6-2. 受講対象

派遣元責任者、派遣元責任者に選任予定の方
※その他労働者派遣事業の知識を習得したい方も受講は可能です。

6-3. 派遣元責任者講習概要

派遣元責任者講習は、数日かけて行われるものではなく、1日間のみで終了する講習です。
労働者派遣事業の許可を受けるために必要となる【受講証明書】は、派遣元責任者講習を受講することで発行されるようになっています。テスト等はありません。

派遣法などの労働法に詳しい専門家が講師を務め、多くは休憩時間を挟みながら10~17時の間で講習が行われます。約6時間と長丁場ですが、内容が非常に多いため、かなり駆け足の講習となります。

講義の内容

  1. 労働者派遣法
  2. 労働基準法等の適用(特例)
  3. 派遣元責任者の職務遂行上の留意点
  4. 個人情報の保護の取扱いに係る労働者派遣法の遵守と公正な採用選考の推進等

労働者派遣法や労働基準法の適用に関すること、また、個人情報と労働者派遣法の取り扱いなどについてです。また、大きな法改正があった場合は、その目的や概要などの説明もあります。

法律など専門的な内容が多くありますが、専門家である講師が具体的な事例などを挙げながら進めていきます。

発行された証明書は、労働者派遣事業の許可申請の際だけではなく、更新手続きのときや、派遣元責任者の就任の際にも必要となる大事な書類です。

6-4. 派遣元責任者講習の選び方

派遣元責任者講習は、厚生労働省が委託した講習機関が全国で実施しています。
完全予約制で、多いところでは毎月8回ぐらい実施されています。

全国の主要都市をはじめとするさまざまな場所で受けることができます。また、同時開催ではなく、開催される場所によって実施日が異なっているため、都合の良い実施場所や日程を選ぶことが可能です。会場により人数制限があるため、派遣事業を開始する前に受講を行えるように予約をしておく必要があります。

具体的にいつどこで開催されるかは、厚生労働省のホームページに掲載されている実施機関や講習日程の一覧で確認することができます。

※講習の日程や予約については、厚労省サイトでご確認ください。
●派遣元責任者講習の講習機関一覧
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000044436.html

申し込みは、希望する機関に直接行います。受講料については、実施する機関によって設定は異なっていますが、全体的に見ると6000~9000円が相場です。
支払い方法は、各実施機関の指示に従って行いましょう。必ず、期限内に支払いを終わらせておくように注意が必要です。

また、2021年より、eラーニングによる受講が始まりました。派遣元責任者講習を受けるのであれば、場所も時間も選ばずに受講でき、修了できるeラーニングは非常におすすめです。

派遣事業者向けキャリアアップ教育訓練eラーニングサービス「派遣の学校」

派遣許可申請中から、キャリアアップ教育訓練の準備をしておくことをお勧めします。
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