目次
1.はじめに
2025年の夏が近づき、連日の猛暑が予想されています。今年は職場における熱中症対策が法的義務となったことが大きな話題です。労働安全衛生規則の改正省令が6月1日から施行され、一定の条件下での作業を行う企業には熱中症予防措置の実施が義務付けられました。対策を怠れば6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金という罰則もあり、各社で社内体制の見直しが進められています。
こうした動向を踏まえ、人材派遣会社(派遣元)としても安全衛生管理に万全を期す必要があります。本記事では、派遣元企業の教育担当者や総務・人事担当者に向けて、安全衛生教育の重要性、法令上の義務、熱中症対策の具体例、そして対策として有効なeラーニング活用について解説します。
2.派遣元企業が行うべき安全衛生教育とは?
まず押さえておきたいのは、派遣労働者に対する安全衛生教育の責任は派遣元企業にもあるということです。労働関係法令上は、派遣元(派遣会社)が雇用主としての責任を負います。つまり、派遣元企業は自社の社員として、派遣スタッフの安全衛生を確保する義務があります。
派遣元が行うべき主な教育内容
- 雇入時教育(労働安全衛生法第59条)
- 業務内容変更時の教育
- 基礎的な安全衛生教育
- 特別教育・技能講習(高所作業、フォークリフト運転、化学物質の取り扱い等)
派遣先企業で行われる現場の安全指導に先立ち、派遣元による基礎教育が求められます。教育を怠ると、派遣元は法令違反として罰則や監督指導の対象になります。
派遣元と派遣先の双方で連携を取りながら、計画的な教育実施と情報共有を行うことが、安全の確保、生産性向上、スタッフの定着率向上にもつながります。
3.労働安全衛生規則改正による熱中症対策義務化
2025年6月1日より、労働安全衛生規則の一部改正が施行され、一定の環境下での作業を行う企業に対し、熱中症予防措置の実施が義務付けられました。
対象となる作業条件
- WBGT(暑さ指数)28度以上
- 気温31度以上
上記条件下で「継続1時間以上の作業」または「1日4時間を超える作業」が対象となります。
これらに該当する屋外作業、高温多湿の屋内作業などが主な対象です。建設現場、工場、倉庫、農業等の幅広い現場が含まれます。
義務付けられた2つの対策
-
報告体制の整備
作業者が自分や他者の熱中症症状に気づいた場合、速やかに報告できるよう連絡体制を明確化。
担当者の連絡先、代行者、手順をあらかじめ周知。
巡視、バディ制度、ウェアラブルデバイスなどの導入も推奨。 -
症状悪化防止措置の準備
作業中断、冷却、医療機関受診、応急処置の流れを定める。
氷や冷却シート、日陰・空調のある休憩所の設置。
衣服の緩和、水分補給、一人にしない体制なども含む。
罰則
- 6カ月以下の懲役 または 50万円以下の罰金(安衛法119条)
- 法人も対象(安衛法122条)
熱中症対策は努力義務ではなく「義務化」されました。怠った場合には労働基準監督署による使用停止命令などのリスクもあります。
派遣元としても、派遣先の作業環境を把握し、スタッフが対象作業に従事する可能性があれば、必要な教育と協力体制の整備が求められます。
4.安全衛生教育を怠った場合のリスクとトラブル事例
安全衛生教育を実施しないまま派遣スタッフを就業させた場合、次のような深刻なリスクが発生する可能性があります。
主なリスク
- 労働災害の発生(熱中症、転倒、挟まれ、化学物質事故など)
- 安全配慮義務違反による労基署からの是正勧告や行政処分
- 損害賠償請求(民事訴訟)
- 刑事責任の追及(労働安全衛生法違反)
- 社会的信用の失墜(派遣契約の打ち切り、報道等)
実際に起こりうるトラブル例
- 派遣先で熱中症により倒れ、緊急搬送されたが、派遣元で事前教育がなかった
- 高所作業に従事させた派遣スタッフが転落し、教育未実施が原因と判断され書類送検
- 教育記録が残っておらず、監査対応ができずに派遣業許可の更新に支障
「知らなかった」では済まされないのが、安全衛生教育の世界です。
派遣元企業として、「誰に、どのような教育を、いつ実施したか」を明確に記録・証明できる体制が必要不可欠です。
5.派遣会社でのeラーニング活用のメリット
業種・職種が多様でスタッフの勤務地や勤務時間もバラバラな派遣業において、集合研修による安全衛生教育の実施は困難です。そこで効果を発揮するのが「eラーニング」の活用です。
eラーニングの5つのメリット
- 時間・場所を選ばない柔軟性
スタッフが自分のペースでスマホ・PCから受講できる。
シフト制・短期就業でも教育機会を確保。
集合研修の時間調整が不要に。 - 教育記録が自動で残る
「誰が、いつ、どの教材を受講したか」がシステムに自動記録。
監査・報告書作成にも活用可能。
Excel出力やPDFレポートも簡単。 - コストの削減
講師費用、会場代、交通費などがゼロ。
大人数対応でもスケーラブル(拡張性が高い)。
反復学習も追加費用なしで実施可能。 - 教材の標準化と品質確保
どのスタッフにも同じ教材で教育。
動画・スライド・クイズなど視覚的に理解しやすい構成。
専門講師による教材で内容の信頼性も高い。 - 法改正・最新トピックへの即時対応
熱中症対策、ハラスメント防止、VDT作業など最新テーマを即反映。
法令対応漏れのリスクを軽減。
「派遣の学校」でできること
派遣会社向けに特化したeラーニングサービスとして注目されているのが、ProSeedsの「派遣の学校」です。
特徴①:業種別コンテンツが豊富
- 製造、介護、建設、IT、事務、販売など多様な職種に対応
- 職種ごとの専門教育 + 安全衛生教育が可能
- 法改正に対応した最新教材も随時更新
特徴②:安全衛生教育もカバー
- 雇入時教育、業務変更時教育、熱中症対策、VDT作業、腰痛予防など
- 派遣スタッフに求められる基本+現場対応力を育成
- 短時間・高密度で学べる構成
特徴③:管理者にやさしい運用設計
- 受講履歴・修了状況の一元管理
- 事業報告書の自動生成(厚労省提出フォーマット対応)
- ID数に応じた課金制だから無駄がない
- 月額18,000円〜から利用可能
特徴④:導入・運用サポートも安心
- 専任スタッフによる導入支援
- オリジナル教材のアップロードにも対応
- 法令対応や教育カリキュラムの相談も可能
教育の質と効率を両立したい派遣会社にとって、「派遣の学校」は非常に実用的な選択肢です。
6.まとめ:教育の仕組み化が、派遣会社の信頼を高める
2025年の熱中症対策義務化により、安全衛生教育は「努力目標」から法的義務へと変化しました。
派遣元企業として、以下の対策が求められます。
これから対応すべきこと
- 派遣スタッフへの雇入時教育・業務変更時教育の実施
- 熱中症対策を含むリスク教育の強化
- 教育履歴の明確な管理と証明
- 派遣先とのリスク共有と協力体制づくり
集合研修の負担や人手不足を理由に後回しにしていては、リスクが拡大するばかりです。今こそ、安全衛生教育の仕組み化を進める絶好のタイミングです。
eラーニングの導入によって、手間をかけずに効果的な教育を実施できる体制を整えましょう。