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2021年改正派遣法6つのポイントとまとめ!お役立ち資料もあります


2021年に、派遣法が2回にわたり改正されます。改定することは知っているものの、実際にどの部分が対象なのか、またどのような対応が必要なのか、よくわからずに困ってはいませんか。

今回はこれまでの派遣法の歴史を追いながら、2021年に行われる改定のポイントについて網羅的にご紹介します。迅速に対応すべきポイントもありますので、対応できているかどうかのチェックのためにお使いください。

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2021年の改正派遣法の6つのポイント

今回の改定施行は2021年の1月と4月の2回に分けられており、大きく6つの内容が変更されます。改定時期に沿って、変更内容とそのポイントをみていきましょう。

2021年1月1日の派遣法の改定内容

1月1日に施行される改定内容は大きく4つです。

その1, 派遣労働者の雇入れ時の教育訓練・キャリアコンサルティングに関する説明の義務付け
その2, 労働者派遣契約に係る事項の電磁的記録による作成について
その3, 派遣先における派遣労働者からの苦情の処理について
その4, 日雇派遣について

それぞれについて見ていきましょう。

 

その1,
派遣労働者の雇入れ時の教育訓練・キャリアコンサルティングに関する説明の義務付け

今回の改定において最も重要な内容と言って良いでしょう。2020年度の改正時には、同一労働同一賃金に伴って、賃金等に関する説明が義務化されましたが、今回は教育訓練・キャリアコンサルティングに関する内容の説明の義務化です。

労働者に対するキャリア形成支援をより強化することがねらいと考えられます。

具体的には派遣元事業者が労働者を雇い入れる際、以下が義務付けられます。

  • 教育訓練計画(派遣元事業者が行う内容)の説明
  • 希望者に行うキャリアコンサルティングの内容の説明
  • 教育訓練計画が変更された場合の変更内容の説明

教育訓練と希望者へのキャリアコンサルティングについては、2015年の改定時に義務化されていました。このように環境は整ったものの、受講率についてはそれほど芳しくないのが実情のようです。

同様にキャリアコンサルティングにおいても、受講率が少ない傾向にあります。労働政策研究・研修機構が2018年に発表したコラムによると、中小企業(300人未満)のキャリアコンサルティング実施率はわずか5.2%だったとされています。
※参考:労働政策の展望「これからのキャリアコンサルティングに求められるもの」|労働政策研究・研修機構(JILPT)

一方でキャリアコンサルティング経験者の7割にのぼる人が「問題が解決した」と語るなど、受講者の満足度が高いことも報告されています。
※参考:キャリアコンサルティングの現状と課題 特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会

こうした状況を受け、教育訓練とキャリアコンサルティングの実施を強化していくことが、労働者のキャリア形成につながるという見解から、今回の改正につながったものだと考えられます。

また、この度、派遣会社向けeラーニングサービス「派遣の学校」では改正派遣法対策として『派遣労働者への雇い入れ時の説明義務付け』ガイドブックを作成致しました。
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その2,
労働者派遣契約に係る事項の電磁的記録による作成について


派遣元事業者が派遣先企業と結ぶ「労働者派遣契約」において、電磁的記録(デジタル文書)が認められます。そのため業務効率の軽減に寄与するのではと考えられています。

これまで労働者派遣契約については、書面のみとされてきました。そのため派遣社員の契約更新は比較的頻繁に行われるため、書類への記入や押印、書類のやり取りなどに時間がかかっていたところも多かったのではないでしょうか。

今回の改定を受け、両者それぞれが業務改善を図れるほか、収入印紙代を軽減させることもできるでしょう。

 

その3,
派遣先における派遣労働者からの苦情の処理について


これまで派遣社員から労働に関する苦情が上がった際に、主に対応するのは派遣元事業者でした。しかし今後は、派遣先企業も主体的かつ誠実に対応していくよう求める改定です。

労働に関する苦情とは、主に以下のような内容を指します。

  • 労働基準法に準ずる内容
  • 労働安全衛生法
  • 育児休業
  • 介護休業

 

その4,
日雇派遣について


落ち度があった場合以外の問題で、契約解除が行われた日雇い派遣労働者について、派遣事業主は労働基準法等に基づく責任を果たさなければならないと明示したものです。

日雇い派遣については、2015年に原則廃止となりました。しかし60歳以上や本業収入が500万円以下の副業など、一定の業種または条件下では認められていました。

こうした労働者については、たとえ新たに派遣先が見つからなかったとしても雇用を維持すること、また休業手当の支払いなど労働基準法等に基づく責任を取ることが求められることになります。

 

2021年4月1日の派遣法の改定内容

続いて4月1日に施行される2つの改定内容をチェックしましょう。

その5, 雇用安定措置に係る派遣労働者の希望の聴取等
その6, マージン率等のインターネットでの情報提供について

 

その5,
雇用安定措置に係る派遣労働者の希望の聴取等


2015年の改正時にポイントのひとつとなったのが、雇用安定化措置の義務化です。今回はさらに、ヒアリング内容を派遣元管理台帳に残すことが追加されました。

雇用安定措置とは、同一の組織に3年間派遣されることが見込まれている労働者に対して、雇い止めを防ぐために派遣元事業者に義務付けられたものです。また1年以上3年未満の社員に対しては努力義務が課せられています。

具体的には以下4つのうちのいずれかが求められます。

  • 派遣先への直接雇用の依頼
  • 新たな派遣先(就業機会)の提供 ※能力、経験等に照らして合理的なものに限る
  • 派遣社員以外の無期雇用労働者としての雇用機会の確保とその機会の提供
  • その他雇用の安定を図るための必要な措置(紹介予定派遣や教育訓練など)

派遣元管理台帳には、ヒアリングの際の詳細も記載することが必要です。

 

その6,
マージン率等のインターネットでの情報提供について

派遣元事業者に情報提供義務が課せられた4つの情報について、インターネットなど適切な方法で明示することが原則求められるようになりました。

4つの情報とはご覧のとおりです。

  • 事業所ごとの当該事業に係る派遣労働者の数
  • 労働者派遣の役務の提供を受けたものの数
  • 派遣料金のマージン率
  • 育訓練に関することや業務に関して関係者に知らせることが適当とされる厚生労働省令で定める事項

マージン率に関しては2012年に情報公開が規定されていましたが、より多くの情報の公開が必要となります。

改正に合わせ、すでにこれらの情報を公開している派遣元事業者もあります。こうした情報を事前にチェックしておくのも良いでしょう。

 

そもそも派遣法とは


派遣法は1986年に生まれた法律です。今では当たり前になっている人材派遣も、この年までは禁止されていました。

しかし働く人達の中には、自らの能力を活かし、より柔軟に働きたいという思いを抱いている人もいらっしゃいました。一方で、一時的に必要なスキルを持った人を雇いたいという事業者のニーズもあり、1985年に制定、翌年に施行されたのが派遣法です。ここから日本における人材派遣の歴史が始まっています。

 

表で見る派遣法改定の歴史

派遣法は制定後、今日に至るまで何度も改定が行われています。改定した年と主なポイントはご覧のとおりです。

概要
1986年 派遣法施行。
9ヶ月間のみ13業種について人材派遣が認められる。
1996年 業種を26に拡大。
1999年 建築・警備・医療・製造・港湾をのぞく全ての業種で派遣が解禁に。
2000年 予定紹介派遣の解禁
2004年 ・製造業での派遣解禁(1年)
・26業種の派遣期間延長(3年から無期限に)
2006年 医療における一部の業務で派遣解禁
2007年 製造業の派遣期間延長(3年)
2012年 ・日雇い派遣(31日未満)の原則廃止
・グループ内派遣を規制
・離職1年以内の元の派遣先への派遣の禁止
・マージンの見える化
・賃金・待遇の事前説明の義務化
2015年 ・全ての派遣事業が許可制に
・派遣期間を3年に統一(一部例外あり)
・雇用安定化のための義務
2020年 同一労働同一賃金(派遣社員の賃金決定方法の厳格化)
・賃金等に関する情報を提供する義務

 

派遣法が守ってきたもの

制定された当初、派遣法は柔軟な働き方をしたい働き手と、こうした労働者を求める事業者とのマッチングが適正に行われることを目的として制定されました。

そのため2007年までの改定は、主に派遣業種の規制緩和が主なポイントとなっています。

一方、2012年以降は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣社員の就業条件の整備等に関する法律」と正式名称を変更。派遣社員の保護や正規雇用のためのキャリア形成などを目的とした改定内容にシフトしています。

これは当時のそれぞれの時代背景が大きく関わっています。

2012年までは企業ニーズが優先だった

1986年に制定された当初は、正規雇用の仕事が派遣に置き換わらないかという懸念が持たれていました。適用を13業種に押さえたのも、こうした意図があります。

しかしバブル崩壊後の1990年代以降は、固定費をできるだけ押さえたいという企業が増え、利用が大きく進んでいきます。国もこうした企業のニーズを読み、1996年から2007年にかけて利用できる業種を少しずつ拡大していきました。

こうして2007年には、下記の職種以外の仕事について、派遣が原則的に認められるようになっていきます。

派遣が禁止されていた職種
  • 港湾運送業
  • 士業
  • 建設業
  • 警備業
  • 医療関連(一部を除く)

2012年以降は「労働者保護」と「キャリア形成」の時代に

しかし2012年を境に、規制緩和が続いたこれまでの流れが一変。日雇い派遣の原則禁止や派遣事業の許可制など、派遣元事業者や派遣社員を迎える利用企業の行動を規制する動きが強くなります。

労働災害の発生の原因にもなっていた日雇い派遣の原則禁止や、労働者や派遣先となる事業主がより適切な派遣会社を選択できるよう、インターネットなどにより派遣会社のマージン率や教育訓練に関する取り組み状況などの情報提供の義務化がされたのもこの2012年でした。

これはリーマンショック以降に問題となった「派遣切り」(雇い止め)やワーキングプアの存在が社会問題となったことが大きな理由と言われています。

「派遣切り」とは企業側の一方的な都合により、契約途中で解雇されたり、今後も続くだろうと思われていた契約が更新されなくなったりするような場合を指します。事前に申し入れがなかったり、進言していても直前だったりすることが多く、補償や次の就職先のサポートなども行われないことがほとんどです。

その結果、日雇い派遣で食いつなぐ若者や、生計が立てられずに窮地に追いやられる方々が増加。こうした状況が問題視された結果、派遣元事業者だけでなく派遣先にも、労働者を守り、正規雇用につながる教育を義務化するような流れが生まれていきます。

実際に、2012年までの派遣法の正式名称は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」でした。しかし、その年を境に「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」と、明確に労働者保護を打ち出す内容になっています。ここからも、前後の派遣法の路線の違いを感じていただけるのではないでしょうか。

2015年にはすべての派遣事業が許可制に

2015年に労働者派遣事業はすべて許可制となり、それまで届出制だった特定労働者派遣事業と許可制だった一般労働者派遣事業の区別が廃止されました。

特定労働者派遣事業では、「常時雇用」が前提であったにもかかわらず、「常時」の規定がなかったために、1年という期限付きの常時雇用がされているなどの実態が指摘され、労働者の雇用不安定につながっていました。

そこで、すべての派遣事業の健全化を目指し、「許可制」となりました。キャリア形成支援制度を持つことが許可要件となっていたため、派遣社員はすべての派遣会社でキャリア形成支援が受けられるようになりました。※細かく言うと、1年以上雇用見込みの人など、条件はあります。

2015年「3年ルール」が施行

2015年には、さらに派遣期間の規制が厳格化され、派遣社員を同じ組織に3年以上継続して派遣できなくなりました。いわゆる「3年ルール」です。3年というルールを設けることで雇用が不安定な状態にある派遣社員の待遇改善を目的にしています。

長く働きたいと望む派遣社員の直接雇用の機会や、別の好待遇の派遣先を提供するなどの派遣社員の待遇改善につながります。

一方、施行されたことによって、派遣元企業は派遣先企業への直接雇用や、無期労働契約の転換、別の派遣先企業を紹介する、などの対応を求められるようになりました。

また、「2018年問題」という言葉も出てきました。2015年に施行されたことによって、多くの企業(派遣先)が3年後の2018年にも雇用契約の対応が求められ、また派遣元企業にも雇用の対応が求められたことで、派遣社員にとっては雇い止めの可能性があることから「2018年問題」として問題視されました。

2020年には「同一労働同一賃金」が決定

同一労働同一賃金とは、「仕事ぶりや能力が適正に評価され、意欲をもって働けるよう、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すもの」です。

それに合わせて、「不合理な待遇差を解消するための規定の整備」や「労働者に対する待遇に関する説明義務の強化」のため、パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法が改正されることになります。

派遣会社は2020年4月から施行され、派遣先均衡均等法式「派遣先の労働者との均等・均衡を図る方式」もしくは労使協定方式「労使協定による一定水準を満たす待遇決定方式」のどちらかを利用した契約が求められ、いっそう労働者の雇用に対してしっかりした受け入れ体制を求められるようになってきています。

単に賃金を見直すだけでなく、キャリアアップ教育訓練等を行った結果の能力や成果、職務内容といったものの向上を評価し、賃金に加味するという項目もあり、賃金制度や人事評価制度の作成・見直しを求められました。

 

派遣法違反を犯してしまった場合の罰則

社会の流れとともに何度も改定されてきた派遣法ですが、もし違反してしまった場合はどのような罰則があるのでしょうか。

罰金や懲役刑が課せられることも

違反行為によって罰則は異なりますが、30万円の罰金や1年以下の懲役など重い罪が課せられます。場合によっては許可の取り消しや業務停止、改善命令などが行われることも。

また、派遣元だけでなく派遣先が罰せられる場合もあります。これは意図しなかった場合も同様です。「知らない間に違反していた」ということが起こらないよう、今回の改定内容をしっかり確認いただきたいと思います。

 

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改正派遣法への対応に不安を感じている事業者様や、2015年の改定時に導入したサービスを考え直したいと感じている方は、ぜひ一度お問い合わせください。

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