2025年の法改正(労働安全衛生法改正)により、ストレスチェック制度は大きな転換点を迎えました。「50人未満の事業場」も義務化対象となったことを踏まえ、派遣業界の実務に即した内容で書き直した最新版ガイドです。
目次
派遣業のストレスチェック|派遣元・派遣先の実務ガイド【2025年法改正対応・保存版】
はじめに:2025年法改正で「全事業場」が義務化へ
これまでストレスチェックは、従業員50人以上の事業場にのみ義務付けられていました。しかし、2025年5月の法改正により、50人未満の小規模事業場についても実施が完全義務化されることが決定しました(2028年5月までに完全施行)。
派遣業界では、小規模な営業所や少人数の派遣現場が多いため、この改正は極めて大きな影響を与えます。本稿では、最新の法規に基づき、派遣元・派遣先がとるべき対応を体系的に解説します。
1. ストレスチェック制度の基本と「派遣特有」の論点
派遣労働者のメンタルヘルス管理は、雇用主(派遣元)と指揮命令者(派遣先)が協力して行う必要があります。
派遣特有の4つの重要論点
- 対象者のカウント: 50人未満義務化の猶予期間中であっても、派遣先は「派遣労働者を含めて」人数をカウントする義務があります。
- 実施主体: 個人の受検・面接指導の責任は、雇用関係のある派遣元にあります。
- 集団分析: 職場環境改善のため、就業場所である派遣先での分析が推奨されます。
- 情報の取り扱い: 派遣元が把握した個人の健康情報を、本人の同意なく派遣先に共有することは厳禁です。
2. 「常時使用する労働者」の数え方と義務の発生
改正法施行後は、すべての拠点が対象となりますが、現時点での「カウントルール」を再確認しましょう。
- 派遣元: 自社の内勤社員 + 派遣スタッフの合計で判定。
- 派遣先: 直接雇用の社員 + 派遣スタッフの合計で判定。
ポイント: 派遣労働者は「派遣元・派遣先の両方」でカウントされます。2025年以降、これまで「30人規模だから対象外」としていた派遣先でも、順次実施が必須となります。
3. 派遣元・派遣先の役割分担早見表
義務化の範囲が拡大する中で、役割の混同を防ぐことが重要です。
| 項目 | 派遣元(雇用主) | 派遣先(指揮命令者) |
| 実施義務 | あり(主体) | なし(実施の場の提供) |
| 受検の実施・通知 | 派遣元が全スタッフへ実施 | 関与しない |
| 面接指導の手配 | 派遣元の産業医等で実施 | 実施のための時間確保・配慮 |
| 集団分析 | 実施・統計情報の作成 | 分析結果に基づく環境改善 |
| 就業上の措置 | 医師の意見に基づき決定 | 現場での業務調整への協力 |
4. 【最新】小規模事業場(50人未満)における注意点
全事業場への義務化拡大に伴い、特に以下のリスクに備える必要があります。
- プライバシーの特定リスク: 数人のチームで集団分析を行うと、個人の結果が推測される恐れがあります。通常10人未満の単位では分析結果を出さないなどのルール設定が必要です。
- 産業医の確保: 50人未満の事業場には産業医の選任義務がありませんが、高ストレス者への面接指導は必要です。地域産業保健センター等との連携を今のうちから検討しておくべきです。
- 管理コストの増大: 小規模拠点を多く持つ派遣会社にとって、アナログな管理は限界を迎えます。デジタル化による一元管理が不可欠です。
5. 実務フロー:導入から改善まで
① 派遣元のフロー(個人対応)
- 体制構築: 実施者(産業医・保健師等)の選任と規程の作成。
- 受検実施: Webや紙で実施。派遣先での就業時間中の受検を認めるよう、派遣先と調整しておくと受検率が上がります。
- 面接指導: 高ストレス者から申し出があった場合、医師による面接指導を派遣元が手配します。
② 派遣先のフロー(職場改善)
- 統計情報の受領: 派遣元から、個人が特定されない形に加工された「集団分析結果」を受け取ります。
- 環境改善: 分析結果に基づき、過度な残業の抑制やコミュニケーションの活性化を図ります。
6. よくある誤解と正しい運用
- 誤解1:派遣先が個人結果を見て配置を決める
- 正解: 本人の同意なしに派遣先へ個人結果を渡すことは違法です。
- 誤解2:50人未満のうちは何もしなくて良い
- 正解: 安全配慮義務は人数の多寡を問いません。義務化を待たず、今のうちから実施体制(eラーニング等)を整えることがリスクマネジメントに繋がります。
7. 教育・啓発とITツールの活用
法改正による全拠点義務化への対応には、効率的なシステムの導入が鍵となります。
派遣の学校(ProSeeds)での対策
派遣業界特有の複雑な管理(多拠点・多職種)をサポートするため、派遣の学校では以下のソリューションを提供しています。
- 全社一斉の安全衛生教育: ストレスチェック前のセルフケア教育をeラーニングで効率化。
- 事業報告書の自動作成: 拠点数が増えても、労基署への報告業務を大幅に削減可能。
- 低コスト導入: 月額1万8千円から、全社的なメンタルヘルス対策をスタートできます。
まとめ
2025年の法改正により、ストレスチェックは「一部の大きな拠点」の課題から、「すべての派遣会社・派遣現場」の義務へと変わりました。
派遣元は個人を守るインフラを整え、派遣先はそれを受け取って現場を良くする。この連携をスムーズにデジタル化することが、法改正を乗り越える唯一の道です。
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